106 ずっとずっとずっとずっと

鯨日記
·

仕事終わりにスーパーでタコハイとコッペパンを買った。今週引っ越すにあたり洗濯機はもう水抜きを済ませ、冷蔵庫もほぼ空のような状態だったから、明日の朝ごはんにと買ったピーナッツ・コッペパンだった。でもレジを通した後にそれをバッグに入れず手で持ってスーパーを後にしたのがすべての間違いだった。コッペパンは「今もう食べれますよ、今が旬ですよ」みたいな顔をしてこちらを見つめてきて、仕事終わりの判断力で包装を破らない訳がなかった。私はタコハイのプルタブをカシュッという子気味良い音で開けた後、タワーマンションの裏手を通ってアパートへと帰る道すがらだった。歩きながら酒を飲んでいて、塞がった手を開けるために飲みさしのタコハイの缶を口で咥える。あろうことか私はやわい顎力(あごぢから)でそれを咥えながら、勢いよくコッペパンの包装を引きちぎったのである。その後の惨劇は想像に易いだろう。酒缶は待ってましたと言わんばかりに私の口を離れ、空中に浮かんだ缶を慌てて掴むとなぜか逆さになっており、半分ほどわたしのアウターにそれはかかった。ドボドボボという音が、AirPods越しにも鮮明に聴こえた。私は思考停止になり、零した酒はすべて私のキルティング・コートとアスファルトに還り(他に迷惑を掛けていないことをきちんと確認し)、それでも歩みは止めなかった。私は歩き続け、何もなかったかのようにように残りの酒を飲んだ。タコハイはあっという間に飲みきり、飲み足りなかった私はコンビニで男梅サワーとソーセージおにぎりを買った。そして先述の通り、洗濯のしようがないから途方に暮れている◆それでも、仕事で泣きたくなるほど嬉しいことがあった。でもそれを書くことはできない。今後も書かないだろう。でもここに記させてほしい。日記という媒体において詳細を伏せるというのは一種の冒涜に他ならないことは理解している。それでも、少しの油断でもすれば仕事中にも関わらず涙が溢れそうになったという事実だけでもここに書き記すことで、いつか見返した時に自分が「あの日か」と思い出せるためのマーカーがほしかった。これは誰のためでもない私のための日記で、だから曖昧なままで申し訳ない。日記をいつも読んでくれている方々への誠意としては「こいつなんかええことあったんやな」と思っていただくことで何とか許してほしい。だから日記のタイトル回収もできないし、浮かれて家に着く前に酒を買って飲んで半分零した。阿呆みたいだった。阿呆で馬鹿だった。2024.3.12