8 いまが人生でいちばん幸せ

鯨日記
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12/2 15人ほどの友人たちと会って遊んだ。東京のレンタル・スペース(閑静な住宅街の一軒家だった)を借りて、クリスマス・ケーキを作って、プレゼント交換をして、お酒を飲んだ。酔った頭で近所のスーパーに行って足りなくなった紙パックの赤ワインとシャルドネと菓子類を買った。毎年12月のこの時期に集まる会合も今年で3年目になった。もともと大学のサークル内のイベントとして実施していたクリスマス会の延長線上みたいなもので、3年目にもなると結婚をしていたり妊娠をしていたり恋人と別れたり新しい恋人ができていたりそれぞれの人生があって悲喜交々があった。同じような職種に就職した人が多いからこその近況を報告し合い、それぞれの人生の行く先を思案した。社会の荒波の中で受けた傷を互いに見せ合い、互いの身体へと委ねていく。そうして私たちが今ここにこうして生きているという証ごと目の前の相手に重ね合わせ、自身の存在を確立する。明日からも頑張ろうという活力を得る。他者とここまで月日を重ね、対話を重ねた経験をわたしは他でしたことがない。過半数以上の友人が自分より歳が幾つか上で、様々なコミュニティに属していく中でいつでも後輩に戻れる場所があるというのも貴重だった。まるで歳を取っていないようだった。わたしたちは教室で、サークルの活動場所で、行き帰りの車で、旅行先で、居酒屋で、誰かの家で、時には何かを食べながら、相手の目を見ながら、いままでずっと他愛もない話をしてきた。それをこれからも、願わくば永遠にやっていたいと、毎年この瞬間に再確認する。今日もそんな夜だったことがたまらなくうれしかった。帰宅する先輩を駅まで送って、そのまま知らない夜の街を散歩した。公園で「どーんじゃんけんぽん」をして、牛丼屋で牛丼を買って、コンビニでフルーツ・オレを買った。部屋に戻ると朝までボード・ゲームをする輪の脇で数人が深い眠りに落ちていて、心地よい波の中でわたしも気がついたら浅い眠りに落ち、ふと目が覚めてはボード・ゲームの輪に加わり、安心してまた眠った。

12/3 昨日のクリスマス会から残った数名の友人と錦糸町のカプセル・ホテルに併設されたサウナに行った。昔の恋人と別れてからしばらく無意識に遠ざけていた街に、久方ぶりに足を運んだ。地下鉄の構内から地上に登りその眩しさに目を細めた。「朝ガールズ・バーいかがですか。朝テキーラ・サービスしますよ」と黒のベンチ・コートを着たサッカーの日本代表監督みたいな男の人に声を掛けられる。後ろでは白いダウン・ジャケットを着た女性が微笑んでこちらを見ていた。さびれた休憩所で少し眠り、煙草を一本吸って、代々木公園の方に出た。公園内にはキッチン・カーが立ち並び、音楽イベントが開催され、大道芸人が声を張り上げていた。女性たちは写真を撮り合い、子どもたちは走り回っていた。天高い秋空を鳥が飛んで、風が木々を揺らし葉の擦れ合う音が辺りに響いた。銀杏は潰れ、犬は地面を嗅ぎまわり、大人は酒を飲んでいた。わたしたちは話をした。明日が仕事なんてことも忘れて、いつまでも話をしていたかった。2023.12.3

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