141 泥

鯨日記
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体の穴という穴に泥が詰まっている。それは粘土のようにべっとりしていて、掻き出そうと指で押すとぐぐっと押した形に変形するだけで状況は何も好転せず、手元を見やれば爪と肉の間に泥だけが残っている。その泥は自らの行動によって招いたもので、誰のせいにもできない。私のせいでしかない。自分の幼稚で浅はかな行為がもたらした泥。方々に迷惑をかけて、泥に飲まれていなくなりたいと思って、私の過去も恥ずかしいことも何もかも知っている友人に今置かれているわたしの状況と苦しい人生をLINEで相談したら、その人はただウンウンと聞いてくれた。そして何ともないようにわたしの掛けてほしかった言葉をかけてくれる。過去にも同じようなことで相談した時に「もう君はそういう星の元なんだよ」と言ってくれたこと、その言葉に今でも救われている、と言ったら「言った気がする。今も思ってる。簡単に言えば、君らしく生きてるだけなんだよ」と返事が来た。友人の淡々とした声でテクストが再生される。今こうやって喫茶店でひとり文字に起こして、その言葉がびりびりとわたしに届く。わたしらしく生きているだけ。なのに。その後「動画でもみておく?」と言われて脈絡もなくその友人の面白い動画が3つほど送られてきて、口角が少しだけ上がった。自分の不甲斐なさで泣かないように駅のホームで頼れるもう一人の友人に電話をしたら「今から飲もう」と言ってくれひとしきり話を聞いてくれた後に「お前の人生は本当に面白い」と笑ってくれた。この瞬間だけは自分が世界で一番不遇で悲しく惨めな奴だと思いたかったのに、なぜだか面白いことが次々に起こる夜で、久しぶりにお腹がつるほど笑って涙が出た。2024.4.16(17追記)