135 いきむず

鯨日記
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部屋に花の匂いが充満している。贔屓にしている花屋で買った花が本棚の上に置かれている。まだ一輪しか開花していないのに植物園の入口のような匂いがして、季節が過ぎるのが待ち遠しい。赤ん坊をあやすみたいに抱いて家まで持ち帰った。マスクをずらし、歩きながら揺れるそれを時折嗅いでみた。人工では消して出せない純白な香りと色◆何も考えずに小分けのチョコレートを食べていたらいつの間にか最後のひとつだった。近道だと思って通った路地が遠回りだった。隣の方がホームのエスカレーターに近いと思って移動したら結局さっきまでいた号車の方が近かった。そんな感じでまあ楽しく生きていますがそちらはどうですか。さっき100円ショップのレジに並んでいたら一円玉が落ちていて、レジの近くだったら拾って店員さんに渡したけれど長い会計列の中盤ほどで、だからいま拾うと後ろの客にネコババしたと思われるから拾えず、結局見逃してしまった。私はいささか考えすぎるきらいがある。些細な会話を人と交わした後に一人で歩いてい、さっきまでの会話の端を掴んだまま来てしまったと気づく。あの言葉尻はよくなかったかもしれない。あの言葉のニュアンスはうまく伝わっているだろうか。言葉を発した瞬間にその言葉を手放せる人に憧れる。風船をなんの未練もなく空へ手放せるような軽薄さがほしい。自分が受けた言葉と吐いた言葉の尻尾をいつまでもウジウジと掴んで離せない。2024.4.10

@kujuranosenaka
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