123 タワマン(3/29)

鯨日記
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高校の頃好きだった人とお酒を飲んだ。その人は明日も仕事だったから一軒で解散し、飲み足りなくてその足のまま目に付いたバーに入った。地下にあるウイスキー専門のバー。照明が落とされ、壁面にはプロジェクターで投影された知らない外国の映画が無音で再生されていた。その代わり私が入店した時はイーグルスの『ホテル・カルフォルニア』が控えめなヴォリウムで静かに流れていた。私の母が好きな曲だった。晴れた夜の深い森のような、丁寧に手入れがされた麻のようないい香りが店内を満たしていた。癖の強いマスターがウイスキーを丁寧に説明してくれた。麦芽の香りを「パン屋の前を通った時のような匂い」と素人にもわかるように形容してくれた。野球を見終わったという後輩に連絡をしたら今から会えると返事が来たから、オードブルを食べて二杯目を飲み終えてバーを後にした。タワマンの一室一室に灯された光を見上げながら酒を飲んで「あいつらを全員引きずり下ろそう」という話をした。明日も会う予定だったから終電で別れた。2024.3.29

@kujuranosenaka
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