131 花(4/6)

鯨日記
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花屋で花を買った。店員のおばあちゃんに予算を尋ねられたので答えると「まあ予算は一回度外視して」とえっさっさと選んでくれた。なんで聞いたんばあちゃん。包んでもらっている間「隣の家の花壇見た?チューリップ綺麗に咲いてたわ。見てない?見ていらっしゃい。今すぐ」と言われ、何故か一回店の外に出て隣の家に行く時間があった。写真を一枚撮って戻ると「綺麗だったでしょ」とばあちゃんは笑い、するするとラッピングをしてくれた。きちんと予算内に収めてもくれた◆本屋で今日発売の「群像」を手に取る。群像新人文学賞の予選通過作品が掲載されていて、自分の名前がないことに対し特に落胆もなかった。本を閉じようとすると隣にいた女性が同じく群像を手に取り、目次を見た後にページを後ろから手繰った。私と同じページを開いた彼女は「ダメだったか」と呟き、一緒にいた連れも同じ言葉を復唱した。私は初めて自分と同じ新人賞に応募している人間を生で見て話しかけたい衝動に駆られ、でもグッと抑えて書店を後にした。あの人の人生のことを想像する。2024.4.6

@kujuranosenaka
酔い潰れたり面倒がって翌日になって昨日のことを書くことが多い X: @kujuranosenaka