60 かけっこ30秒

鯨日記
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一本吸おうや、が合図だった。あと5分で支度する、とだけLINEを送り、ベンチコートを羽織り外に出る。いつもわたしの方が準備が早くて、彼が来る頃には2本目に火をつけていた。学生の頃わたしたちは徒歩1分、かけっこ30秒のところに住んでいて、よくお互いの中間で落ち合って煙草を吸った。彼はサークルをみっつほどかけ持ちしていて、バンドサークル内ではボーカルを7つくらいかけ持ちしていたから、彼を捕まえられるのはその夜くらいだった。煙草を二本吸い終わるまでにダラダラ喋って、またなと言って別れる。あの関係は社会人になった今も続いていて、アパートの間の路地で取り交わした会話は電話越しになった。今駅ついたところ。今どこ?今家。場所が変わっても会話は何一つ変わっていないことに安らぎを覚える。Twitterにあげてた天国のやついいじゃん。ウレシー。焼肉食べいこ。また連絡する。またね。仕事つかれたわあ。2024.1.25

@kujuranosenaka
酔い潰れたり面倒がって翌日になって昨日のことを書くことが多い X: @kujuranosenaka