157 恋愛の自論(5/2)

鯨日記
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仕事を終えてお酒を飲みに行った。2軒目に案内されたカウンターに座ったら連れを挟んで隣のおばさん(お姉さん)とやけに目が合って、最初は無視して話をしていたけれど段々無視できなくなって何度目かのアイ・コンタクトで試しに数回頷いてみたら「いやね、」と急にカットインしてきた。「いやね、あなた(私)が(連れを)口説いてるのかと思って、中々話入れなくて」という言葉を枕にして、三人で飲みに来たのかと錯覚するくらい私たちは込み入った話をした。いや話というよりかは一方的にお姉さんの恋愛のあれこれを聞く回と言った方が正しい気がした。お姉さんが過去どういう恋愛をして、どういう男と出会い、短くはないが長くもない人生で得た男にまつわる知見について。私はこういう複雑怪奇なシチュエーションに遭遇すると笑ってしまう癖があるから例に漏れずひたすら笑っていた。お姉さんは自分の話で笑っていると勝手に思ってくれてより饒舌になった。私は合間にバジルの乗ったガーリック・トーストと日本酒をおかわりした。連れは私がトイレに立っている間もお姉さんの相手として完璧と言っていいくらいの相槌と笑顔を続けていて、最後にお姉さんが全部払うよ、と言った時に私は「ヤッター!ありがとうございます!」と言っていたのに対して連れはきちんと正しく遠慮していた。ただお姉さんが店を後にすると連れの顔が曇った。「なんで知らない人にあんなこと言われなきゃいけないんだろう。私のこと何も知らない癖に」という言葉を皮切りに私は笑うのを止め、夜は曇り、踏切が鳴って、あさりのスープは冷めていった。おばさんは「週4この店に通ってんのよ」と去り際に言っていた。週4カウンターに座って、男女の話を聞いた上で自論を展開して、人の分まで金を払っているのだろうか。もし金がなくてどうしても日本酒が飲みたくなったらあの店にまた行こうと思う。2024.5.2