映画 千と千尋の神隠しで、ハクが千尋に「自分の名前をぜったいに忘れないようにするんだよ」と、伝える場面がある。名前を忘れてしまったら、元の世界に戻れなくなるから、と。
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よくこの言葉を思い出す。
自分の名前を忘れるなんて、と思うけれど、ひとはいちばん大事なことさえも、慣れるとやがて忘れていく。
「君がいないことは君がいることだな」
というサニーデイ・サービスの歌詞が好きだ。いないと気がつくことは、その人がまだ、自分の中にいるということだ。
わたしはずっと、雑誌の編集の仕事がしたい。それもいつでも読んで悔しくなるような雑誌。取材や、文章や、デザインや、写真や、レイアウトや、ひとの深い部分の言葉に触れていられるのは、この仕事がいちばんだと思ったからだ。大学2年生くらいの時から強く思い始め、あちこちの寄り道はあれど、穏やかにずっと続いている気持ちだ。
黙って傍観者でいられないこと。
いてもたってもいられないこと。
悔しいこと。
こういう気持ちも、日々の進み方に身を委ねていたら、自然と消滅してしまう。
大好きなものを確かめるように
わざわざ思い出す。
いろんな場所に行くし、思い立ったうちにおもむくままに動いてみる。
繰り返すようだけど簡単にひとは慣れる。日々は変わっていく。けれど、いちばん大事な部分はそのままに、いつもじぶんのこころに敏感でいたい。