おもちがたべたい

kumasansan
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新年があけてもう2週間も過ぎたのに、2024年はまだ1個もおもちを食べていない。といってもおもちを食べるチャンスはいくらでもあった。寝不足の体を引きずって半ば義務として作った元旦のお雑煮に入れることもできたし、新学期がはじまったあともスーパーには売れなかった七草粥の具材とともにたくさんのおもちが顔を並べていた。上野にでかけた際にみはしやで食べることもできた。

でも、ちがうの。

私が食べたいおもちは、ふかふかで真っ白で、ひと昔になぜか流行ったトルコアイスみたいにびよーんの伸びて、指を入れるとずーんと吸い込まれて地球の裏側(ブラジル?)までいっちゃいそうな、玉のようなおもちなのだ。人気のある、四隅がかたくて焼き目のついたアレじゃなくて、丸々としたアレじゃなくて、ねばねばしてて銭湯でよくみるおばあちゃんのお尻みたいにびよんとしてるもちなのだ。

世間ではおもちを美味しく食べるための焼き網や、電子レンジ活用法が紹介されてるけれど、わたは生まれたて!みたいなのを食べたい。三が日だから、お雑煮にいれるために用意されたそれじゃなくて、お米がないときの代用でもなくて、つきたてのふわふわのおもちなんだ。

理想のおもちは食べたくてもなかなか食べられない。トースターじゃ作れないし、ふわふわのつきたてのそれを手に入れるには、もちつきのプロになるか、もちつきイベントに張り付いて極上のできたてのそれを手にするしかない。もち以外の目的では決して俎上に乗ることがない究極の2択だ。まず第一に道具を揃えたり弟子入りして修行するのは好奇心をそそられるけど、なんせこちとら2人の子持ちで、下の子はまだ乳児だ。現実的にもちつきのプロにになる選択肢は消える。そうするともちつきイベントに参加する道しかない。そうして今日も私は長女の「ねぇママ」攻撃を左から右に流しつつ、いかにもスマホで生協の注文をしてるような真剣な顔で「もちつき」「つきたておもち」を検索している。そうこうしているうちに足元でぎゃー!という金切り声が耳をつく。さっきまで寝ていたはずの次女が目覚めたらしい。あぁまたこれでおもちから遠のいてしまった。1歳をすぎて自己主張が激しくなった次女を抱っこしているとふいにECDのラップを思い出す。「驚いたな50で子持ちだよ。もう抱いたらまるでおもちだよ」。石田さんはもうこの世にいない。私はおもちみたいな赤子を抱いて理想のおもちを食べる日を夢みて今日も乗り切る。