鳥の夢の場合/駒田隼也
・『メトーデ』に続いて今週読んだ二冊目。表紙のコラージュが素敵で購入。帯文を読むと、芥川賞候補作だったらしい。
・主人公の初瀬は、かつて四人の在宅ワーカーで暮らしていたシェアハウスに、蓮見という同居人と二人で暮らしている。ある日、蓮見が「自分はもう死んでしまったようだから、殺してほしい」と初瀬に言ってくる。脈が触れないから、もう死んでしまったのだと。確かに鼓動が聞こえない幽霊のような状態の蓮見を殺すかどうか、初瀬の葛藤の日々が始まる。
・語り口の視点が定まらず、ふらふらとシームレスに移動していく感じは、確かに夢のようだった。最近の芥川賞候補の中では、結構純文純文している気がする。作中にはたくさんの鳥が登場するが、彼らが象徴するものはなんだろう。水浴びをするすずめ、カメパンを盗む鳶、鳥インフルエンザを運ぶ渡り鳥、それによって殺処分される鶏。ただ、いちばんはっきりしているのは初瀬が飼っている文鳥だと思う。初瀬の部屋以外を知らず、外に出ると落ち着きを失うこの鳥は、蓮見と同じように初瀬に生死を握られていると言えるかもしれない。
・先述した鳶は、有名な動画「トンビにカメパンぬすまれた」が元ネタだと思うが、これは作者の遊び心なのか、それとも理不尽な奪われ方をして「なんでなの!」と泣きながら怒る男の子に、抑えられている初瀬の本当の感情が重ねられているのかな、ともちょっと感じた。
・象徴的な描写が盛りだくさんで、それをすべて拾い上げられるほどの読解力が自分にないのが少し悔しい。それでも好きな文章を引用して、それを無理に言語化しないことで今の私の感想にしたいと思う。
いまのわたしはこのこれですでに、本を読んでいるのとおなじだった。波に接することの冷たさは何だか読書だった。まぶたを閉じたりあいたりしているうちに、水平線の夕日はわたしの目になってわたしをみた。