ターン/北村薫
・この本を買ったのはいつだっただろう。五年くらい経つのかもしれない。もう消してしまったTwitterアカウントで、相互さんから教えてもらった。マシュマロだった気がするけど、どういう本が読みたくてマシュマロ募集したのか覚えていない。
・この相互さんは以前他の記事にも登場しているが、ある日を境に忽然とアクティブがなくなってしまった。お元気にしていますか。まだ短歌を詠まれていますか。お勧めしてくれた本を長らく積んでしまってごめんなさい。
・北村薫は初読。〈時と人シリーズ〉というシリーズ作品の二作目らしい。個々のお話は独立しているみたいなので、特に支障はなかった。おもしろかったので他の作品も購入予定。
・主人公は版画家の森真希。運転中に車が横転し意識を失うが、自宅の座椅子で目を覚ます。外に出てみると人間はおろか、動物もまったくいない世界。そして彼女は、ひとりぼっちの世界で、事故の前日からの一日をループする。
・この世界は、一日の間に何をしても二十四時間後には元に戻ってしまう。大怪我を負っても綺麗さっぱり治癒する反面、絵を描いてもまっさらな紙に戻ってしまう。生きがいのない世界で彼女が頼っているのは、もともと彼女の中にいた誰かの声である。その声と会話を続けながら、なんとかループから抜け出す方法を模索するが、何の変化も起きない日々が続く。しかし、諦めかけていた矢先、どこにも通じなかったはずの電話が鳴る。「あなたの版画を自分の作品内に使わせてほしい」、電話口から聴こえた声は、脳内で響いていたあの声にそっくりで……。
・絶望的な世界で、それでも楽しみを見出して生きようとする真希の姿や考え方はさっぱりしていて素敵な人物だなあと思う。中盤からは、電話の主との関係性の発展に久しぶりにときめくような気持ちになった。最後までハラハラしながらも、ラストシーンの美しさは本当によかった。版画家である真希と、やはり美術を仕事にしている電話の主の、美的感性で彩られた会話劇も読んでいるだけで自分までお洒落になるようだった。
・あの人はこんなに素敵な本を勧めてくれていたのか。あの人がまだインターネット上に存在している間に読んでおけばよかった。感想を伝えられなかったのが心残りだ。もし奇跡的にこの文章を読んでくれているなら、ありがとう、お元気で。