2025.12.14/海辺のライブハウスで揺れる波になる

昏解
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公開:2025/12/15

たびたび登場する、読書交換をしている友人に誘ってもらって、Zepp Hanedaで開催されたロックバンドSuchmosのライブに参加してきた。

Suchmosを知ったきっかけは、2018年の紅白歌合戦だった。年末の緩んだリビングで、両親と雑談しながら流し見していたテレビから聴こえてきた「VOLT-AGE」という曲に、一瞬で心を鷲掴まれた。

あまりにかっこよくって、年が明けてもベッドの中で目は冴え冴えとして、YouTubeでMVやライブ映像を見漁り、iTunesで全アルバムを購入するという衝動性を発揮した。音楽に明るいわけではないので、Suchmosのどこがどういいのかとか、どういうジャンルの音楽なのかとかを言語化することはできないのだけど、楽曲によって毛色が違うのに、聴いてて気持ちいいということが共通している気がする。

その後一度アリーナツアーに参加するほど熱中していたのだけど、自分の学業方面が忙しくなってきたのと、2021年からの活動休止が重なって、少しブランクがあった。2024年から活動再開したことは知っていたけれど、新譜を聴くくらいで、そこまで熱心に追いかけていたわけではなかった。

友人は私のツイートを見てSuchmosを好きになってくれたらしい。そしていつの間にか友人の方が熱心なファンになっていた。これは我々の関係で、意外とありがちなことである。

今回誘ってもらったライブは、活動再開して初めてのツアーで、Zepp Hanedaがなんと千秋楽だったらしい。私はそんなことすら知らずに、のこのことやってきた不真面目なリスナーである。しかも個人的には初めてのオールスタンディング。真ん中あたりに陣取って開演を待つ間、ずっとそわそわしてしまう。周りの人たちはみんなイケてる感じだし、音楽に詳しそうな話をしてるし、そもそもノリ方がわからないし。人口密度が詰まってきて、腕を組んで身を縮めながら、背の高い前方の観客の合間に生じた、丁度ステージを見通せる隙間から一歩も動かないようにしっかり立つ。教訓一:スタンディングでローファーは無茶。教訓二:開演まで暇なのでスマホはあった方がいい、すなわちポケットのある服で来た方がいい。

足の裏が痛み出した頃、会場が暗転し、メンバーがステージ上に登場する。死守した隙間から、ボーカルとドラムが見え隠れする。最初はどの曲で来るだろう、盛り上がる曲だろうか、と思っていたが、メロウなフレーズに会場から歓声があがる。そう来るか……、と隣の音楽好きそうな人が呟くのに同感する。

ボーカルの柔らかな第一声を聴いて、ああここに来られて本当によかった、と思った。自然と身体が揺れ出す。左側にいる友人と、右側にいる音楽好きの誰かと一体化して波になる。ステージが優しいオレンジに照らされる。ライブハウスの外は海風と霧雨で底冷えする寒さだったが、ここだけは夏の夕日を溶かす海だった。

一曲目が終わって、ステージ後方の暗幕が開く。復帰後初のEP「Sunburst」をモチーフにしたであろう、真っ黒な太陽が現れる。

Suchmosの楽曲の色に合わせて、太陽の背後の空は景色を変えていく。気持ちのいい音楽と、照明の演出が素晴らしくて、既にかなりの満足感があったのだが、前方の観客の位置が少し動き、すこんと前が空く。スポットライトに照らされたボーカルの、彫像のような横顔が現れる。音楽と、照明と、豊かに表情を変えるボーカルと、踊りまくっている右側の人。同じように揺れている自分に気づいた時、宗教が音楽を利用する理由がわかった気がした。

正直セットリストのすべての楽曲がよくって、一曲ずつ話したっていい気分なのだが、特に突き刺さったのは「Hit Me, Thunder」だったと思う。

盛り上がる楽曲を何曲かやった後の、ブルージーな楽曲。いつの間にか目を閉じて、友人も、踊っている彼も、バンドすら暗闇に消えて、私と音楽だけになって、嵐の夜の見えない波に漂っている。自然と胸の前で手のひらを合わせて、祈るように指を組んでいる。何に祈っているのかもわからずに。何から救われたいのかもわからずに。

誘ってくれた友人には感謝してもしきれない。スタンディングだから、と避けてきた会場も、行ってみたら同じ音楽で揺れるのが思いのほか楽しくて、また行きたいと思った。落ち着く曲も、昂る曲も、どの楽曲もかっこいいので、よければ聴いてみてください。

@kurakurage
読んだ本についての雑感とか日記とか、ネタバレあり