2024.05.12/紛れもない愛だって、わかってる

昏解
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愛じゃないならこれは何/斜線堂有紀

・ミニカーだって一生推してろ:アイドルがファンをネトストする話。この本の中でいちばんわかる気がした。承認欲求が満たされることを愛に錯覚して本当に愛になっちゃうというか。確実に自分のアイドル人生を変えた男はアイドルの自分を推していることを最終的に悲観しすぎていないところが、強い。

・きみの長靴でいいです:天才デザイナーと面倒見がよすぎる写真家の話。写真家に対する愛を退屈な映画で自覚するシーンがいい。写真家を作り物のカリスマ性を向上させるための踏み台にしたようなラストは、読んだ直後は困惑したけど、思い返せば爽快感があるかも。

・愛について語るときに我々の騙ること:収録作の中で正直いちばんしんどかった。男2:女1の親友関係なんて「何も起きないはずがなく…」なんだけど、何も起きない親友状態を維持したいといちばん願っている女の子がいちばん我が強いというか、「わからない」と思ってしまう。でもそれは、私自身の経験によるのかもしれない。

・健康で文化的な最低限度の恋愛:好きになった男性に好かれるためにまったく興味のない趣味を身につけようとする話。自分が自分じゃなくなっていく恐ろしさとそこまでして好きな人に合わせたいというのは、確かにきれいな言葉で表すなら愛なんだろう。だけど、あるものにハマって今まで好きだったものを放り出すなんてことはざらにあるから、積み重ねだけが自分を形成しているわけでもないのか。

・ささやかだけど、役に立つけど:『愛について語るときに我々の騙ること』の後日談。こちらは男2のうちの中のひとりの話だけど、こっちの方がまだわかる。それはやっぱり彼がふたりのうちのひとりを選んでしまったからだと思う。恋人と親友、どちらも変わらず手に入れたままにしておきたい、という気持ちはすごくわかる。

@kurakurage
読んだ本についての雑感とか日記とか、ネタバレあり