2025.11.24/女神が現れてほしかった

昏解
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公開:2025/11/24

メトーデ 健康監視国家/ユーリ・ツェー

・十一月から新しい職場になり、半個室での長い昼休みを手に入れたため、だいぶ読書が捗るような環境になった。今までは帰宅してから読書できるかどうか、だったので結構嬉しい。

・ただ、読むスピードに感想を残すスピードが追いつけなさそうなのが難点。今後は平日に読んで、週末にまとめて書く、という周期になりそうです。

・いかにもディストピアチックなタイトルと表紙で購入。『健康監視国家』の名に違わず、健康に関して厳しく取り締まられ、不健康は罪とされる社会〈メトーデ〉のお話。

・主人公は生物学者のミーア・ホル。彼女はメトーデで模範的な生活を送っていたが、強姦殺人で逮捕された弟のモーリッツ・ホルが獄中自殺したことで健康を維持できなくなってしまう。一貫して無罪を主張し続けた弟の罪は、本当に冤罪だったのか? メトーデの有力者ハインリヒ・クラーマーに追い詰められながらも、ミーアは精神より身体が尊重される社会に抗おうとする。

・誰もが身体的に健康でいられる社会、と聞けばそんなに悪いものでもないような気がするが、そこに義務が発生すると自分の身体はもはや自分の所有物ではなくなる。国のために、国民のために、メトーデのために、風邪をひいてはいけない、怪我をしてはいけない、死んではならない。残された精神には、もちろんプロバガンダで思想の誘導を図る。

・お話が進むにつれて、ミーアと敵対しているクラーマーとの関係がどんどん深まっていくのがおもしろかった。弟の死に絶望を深めたミーアにとって、メトーデの極刑である無期限凍結をもたらしてくれるクラーマーは、自らを追い詰める悪魔から、天国から舞い降りた天使に変わったのかもしれない。

・個人の権利について考えさせられる一方で、ミーアが自らの健康を害した罪で裁判にかけられるシーンが多々あり、傍聴席でそれを見るようなハラハラ感もあってとてもおもしろい一冊だった。ラストシーンには思わず頭を抱えてしまった。自宅で読んでいたら多分叫びだしたくなっていたと思う。身も心も尊厳も台無しにされたことが許せなくて、胸に突き刺さって、まだ抜けないような気がする。

@kurakurage
読んだ本についての雑感とか日記とか、ネタバレあり