神戸日帰り旅2025冬

kuranojo
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公開:2025/12/18

 ゴッホが神戸に来たなら、まあ、行った方が良いだろう。関西圏だし。東京まで行くよりは断然近い。

 

 阪急電車で梅田より西に行くのは初めて。

 過去何度か岡山に行ったときはJRで姫路ダッシュをしたから、本当に初めて。

 京都は某駅から阪急に乗り、十三駅で神戸方面に乗り換える。西ノ宮駅周辺の景色を眺めるに、確実に京都とも大阪とも違うものを感じる。河川の通り方がなんか違う。いやまあ、阪急沿線の景色を見慣れていないだけかもしれないけれど。

 これが兵庫……思えば一人で兵庫に来るのも初めてだった。嬉しい。

 なんか緊張してきた。駅に着いたらとりあえずお金を下ろして自販機で何か買おう。今朝紅茶を飲んでそれきりなので喉がめちゃくちゃ渇いている。腹痛対策に水分制限してもこのざま。

 ちなみに今日も腹の調子は良くはない。カイロ貼ってるからギリ保ってるところある。

 待って。出口どれ!? え! お腹痛くなってきた! C4かB10が最寄りだと思うんだけどわからない! 駅の看板見よう……いや、先に……なんか百貨店とかないすか……便座が温かいトイレに入りたい……。

 わー! エスカレーター右が止まる方だー! 京都は左が止まる方。地元は右止まりだったのに、なぜだか新鮮に感じる。

 駅の方向案内通りに来たら、予定とは違うところに出た。ただ、なんか人の流れがあるからみんなゴッホだろ。たぶん。それより便座が温かいトイレはどこですか!!

 三ノ宮って、南方面はこんなにでかい商店街が何本もあるんだ。良いな、明るくて広くて綺麗な商店街……どことは言わないけれど、某・河原町エリアももっと明るく歩きやすくなってほしいものです……具体的にどことは言わないけれど……。

 バチオシャなパティスリーある。気になる〜! 帰り道みんなここ寄るだろ。お昼はさっきの混み入った細い商店街の方に行きたいお店あるからそっち優先したい。ただ、私は……ああいう飲屋街の雰囲気がめちゃくちゃ苦手……怖いから……。

 なんか音楽が聞こえると思ったら、記念碑があった。春の海……ちょっと音楽の授業で習ってないから知らないかも……あ!?

 このキャラの元ねたの作曲家か!?

 アヴェ・クラシック、たまにストーリー読んでる。私は、かわいくていっしょうけんめいでかわいいプリマヴェーラくんをお供にしています。

 京都の文博を思い起こす建築。あれよりモダンでスッキリした印象があるな。着いたのは10時前くらいだけど、当日券購入の列が外まで並んでいた。

 前半はデッサンとかがけっこう続く。あの、シンプルに絵が上手い。当たり前かもなんだけどゴッホは絵が上手い。あと、ゴッホが描く柳の木というか、向こうの柳の木ってなんか上に伸びた攻撃的なフォルム多くない? ハリポタの暴れ柳も上向きだし。

 目玉のカフェテラスの絵は最前列で見る人用の待機列があった。せっかくなので並ぶ……思ってたより大きかった。この半分くらいの絵だと勝手に思い込んでいた。綺麗だったなあ。夜空が好きだ。この絵と自画像が撮影オッケーだった。

 しかしながら、見ていて一番気に入ったのがピサロの虹の絵だったので、今の私はそっちの方が好きらしい。そして私が気に入った絵はやはりポストカードがない。知ってた。

 今回図録は見送り……カフェテラスの絵を観られたのとピサロでかなり満足しちゃった。 

 常設コーナーの神戸の歴史展示の黒船来航の説明で、ペリーの下にプチャーチンがいた。ゴンチャロフの上司じゃん、こんな顔だったんだ。あなたの部下の小説が好きです。あとこのへんの筒型埴輪って表面にそんなに模様なくて逆三角の穴とかなんすね。鰭がめちゃくちゃ角張ってて格好良い。

 余談。神戸市博のトイレは便座温かかったです。よかったね。

 なんていうか、どこも小洒落ている街だ。

 街灯ひとつとっても昔の瓦斯灯か?みたいなデザインを感じる。これが港町。

 行きたい店までの道中で、さっきのパティスリーが気になったので入ってしまった。一階がケーキや紅茶や焼き菓子の販売フロアで、二階がカフェ。なんだか本当に海外のカフェに入ったみたい。

 苺とローズマリーのティーエイドと、オレンジとキャラメルのクレープ。

 甘じょっぱ! うま! 生地モチモチやわらかい! バターの風味! まろやかなクリームチーズ! あ! フォークとナイフ上手く使えるようになりたい……恥……。え、神戸にはこんな素敵なカフェがあるんすか。良いですね。

 ティーエイドに入ってる果物が氷漬けだったのと、かなり量が多いのとで、急速に胃の弱まりを感じる。美味しいのに……。

 あとで絶対温かいもの食べる。目的の店の近くなのにまだ私はこのオシャカフェでちびちび冷たいティーエイドを飲んでいる……これ持ち帰りにできないかな……だめだよな……。

 お腹いっぱいになってしまった。

 歩いて消化しなくてはいけない。仕方ないから目的の店は帰りに行くか。幸い、まじで知らない街なので歩くだけでかなり楽しい。ありがとう神戸。ありがとう阪急。

 本当に近かったので入っちゃった。

 ロシア東欧料理店イラチカ。

 ずっと来たかったのだ。

 かねてよりほんものを食べてみたかったペリメニ、こちらでデビューさせてもらった。温かい! けっこう胡椒効いてて辛い! ディル入ってるのうれし……水餃子とかそういう感じなんだな。汁物だとは思わなかった、ありがたい。オシャカフェで冷えた身体に染み渡る……。これ……こう……お椀を両手で持って、ガっとして飲みたくなる……美味しいですね……。

 本当はここでビーフストロガノフを戴くつもりだった。もう本当にお腹いっぱいなので、ペリメニとピロシキだけにした。絶対また今度行く。ボルシチもメニューにあるんだけど、今のところレトルトのボルシチに舌が負けているのでちょっと、まだ挑戦できないかも……。

 お店の雰囲気ものんびりしていてよかったなあ。

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 今度こそ山の方へ歩く。カロリーを消化しなくてはいけない。

 恐ろしい坂道。

 本当に合ってるのか不安になりながら、坂をえっちらおっちら歩いていく。

 ロシア雑貨のお店。いりえのほとり。

 気になってたんだよなあ〜〜〜〜!

 プーシキンのお話の冒頭から取った店名らしい。好きですね……。こぢんまりした店内は向こうのバッジや絵本、マトリョーシカやグジェリ陶器にホフロマ塗り細工に、もう……すご……かわい……あ……あ〜〜〜〜〜! 頭が爆発しそう! かわいすぎる!! かわいいよ……ウォッ!!

(私はかわいいものに囲まれると頭が真っ白になって涙が出てくる体質)

 お店の方から聞いた話では、もう20年ほどここでやっているらしい。だったら、ギリ……昔来た時には無かったかも……わからん、むかし神戸に行ったのは実家暮らし時代のことだから既に記憶が穴あきチーズ。

 ナナカマド柄の白樺細工のコースターと、プーシキンの白雪姫みたいな物語に出てくる鏡にちなんだ文章の入った白樺の手鏡と、プーシキンの金の魚という絵本を購入。もちろんロシア語なんだけど、私の力ではあんまりプーシキン邦訳を探し当てられないから、それならよォ! 辞書でもGoogleレンズでもAIでも使って自分で読んだ方が早いよなあ! 嘘です翻訳家さんが丁寧にやってくれた邦訳さがしてますほんまにお願いします……。

(追記。さっき本のタイトルで検索したら邦訳絵本がヒットしたので、そのうち買うと思う。)

 いや、もう……すごい満足してる……今日もう帰っていい……え、あの坂道もう下るの?

 もうちょっと歩くか……。

 もう一件、雑貨屋さん。メゾン・ド・プロヴァンス。

 こちらはフランス。店名のとおり、なんとなく商品の雰囲気から南フランスの気配がする。

 ロシア雑貨でかなりお金を使ったので、慎重に……、かわいいラベンダー柄のランチクロスおすすめされたから買っちゃった。これを毎日見てフランス語勉強のモチベにしたい。イエローの地色に落ち着いた色のラベンダーがかわいい。

 あとアニスのキャンディ。アニスが八角だったら苦手なんだけど、スミレフレーバーの誘惑には勝てなかった。缶カン入りってかわいいね。

 隣のカフェも入っちゃった。今日どんだけ消費してるかわからない。来月クレカ大丈夫かな。もう今月残りはお茶漬け食べます。

 クリームブリュレは眼の前でバーナーで炙ってくれるスタイル。最初はテンション上がるんだけど、思いのほかブクブク大きく気泡が弾けて燃えそうになっていくのでちょっと怖かった。

 ミニカヌレ付きケーキ付きのボルドーセット。入口に掛かっているアメリのポスターと目が合う。クリームブリュレはスプーンで叩くもの。

 甘いね……すごく甘いね……紅茶では太刀打ちできそうにない甘さ。私がコーヒーを飲めたなら……。最近、本当についここ2週間かそこらのうちに気付いたことがあって、たぶん私はもうそんなに甘いものを食べられなくなっている。今日は糖分をたくさん取りすぎた。頭がちょっとくらくらする。一ヶ月分の糖分。

 糖分を少しでも抜くため、もう少し散策する。うろこの家まだ見てないし。入って見て回る元気はないけど。

 良い天気。

 なんかいる。

 イギリス関係のところ。たしかめちゃくちゃシャーロック推しの建物……昔入ったことあるな。剥製がいっぱいあった気がする。

 街に不審者サンタが大量発生してる。

 この逆反りサンタがいるのは洋館長屋。

 なんかまあ、ここはフランスがテーマだし……入るか……。本当はこの通り3館グループチケットの方がオトクなんだけど、もうそんな元気も財布もない。私はわかってるんだ、この先の土産物屋で何か買うことくらい。

 入るなり、いきなりラベンダーの香りに包まれる。子どものときはラベンダーの香りがあまり好きではなかったけれど、なんか大人になったら大丈夫になった不思議。最初の部屋は紫色がテーマになっていて、ガレのガラスやアールヌーボーの調度品で彩られている。ガラスに私が映り込むので撮らなかった。

 隣のミモザの部屋。元気の出るイエローが眩しい。なんかこの隅っこ好き。こういうコーナーが部屋にほしい。

 奇妙な薔薇風呂の部屋。

 いい香りのする石鹸のアトリエみたいな部屋。ね〜〜〜〜これかわいい、なんで買えないの!?

 最後はマグリットなアートが見送ってくれる。

 受付の人と話してたら、昔は本当にフランスの石鹸を売っていたらしい。まあさっきの雑貨屋さんにもあったしな……と思ったら、この建物の隣の英国土産物店でも似たような別の石鹸を売ってるらしい。

 買いました。ほらな。いろんな種類があったけど一番鼻にきた、カリカントスを購入です。カリカントスてなに??? パケはロウバイっぽいんだけど、私の知ってるロウバイの香りとはちょっと違う気がする。これもイエローの花だ。

 もう、めちゃくちゃ満喫したよ。さよなら神戸。こんなに今日一日で楽しめると思ってなかった。今年一番精力的に楽しんだ一日かも。

 行きと同じ阪急で帰る。ただし十三まで特急で20分立つのは我慢できそうになかったので、諦めて普通列車の座席に座る。もう疲れてしまった……すごい満足してる……ありがとう神戸……ありがとうゴッホ……。

 ゴッホが来なかったら私も神戸に来なかったもんな。そういうきっかけがないと行けないくらい、なんかこう、気持ちが遠い神戸。元大阪府民としては、神戸ってちゃんとした格好をして行くハイセンスお洒落の街なので、気持ちの準備がいる。

 喫茶店から聞こえてくる会話テンポも、大阪や京都と比べるとなんとなくゆっくりしている気がする。観光地でもあるので、果たして周りの客が神戸の方々かはわからないけれど。

 他、歩いてて思ったこと。

 神戸の街はなんていうかあちこちにゆとりがあるな。バス停でもない歩道にベンチがあったり、駅前になんかモニュメントとベンチがあったり、ベンチにささやかなアートが添えてあったり。土地が狭くてややこしい京都駅前ではまず見ない光景。

 それに、こう、三ノ宮駅の南北で街の雰囲気が変わるのも面白い。南側は高層ビルやハイブランドの路面店が並んでいてかなり現代の都会を思わせるのに対し、北側は近代歴史保存の心意気を感じる。

 この逆光すぎる洋館にはスタバが入っている。寄ればよかったかも。

 なにひとつピント合ってない最悪な写真なんだけど、この景観配慮ローソンもパッと見た感じではローソンに見えない。京都の渋みカラー景観配慮パターンとはまた違うパターン。面白いね。

 いっぱい歩いたなあ。実際そんなに距離ないと思うけど、坂道のおかげか、たくさん歩いた実感がある。楽しかった。

 購入したもの(一部)

 ちょっと買いすぎたね。楽しかったから仕方ないね。

 いりえのほとりさんで見た、ホフロマ塗りの起き上がりこぼしが可愛かったので、また来たい。そういう雑貨が似合う部屋にしたいね。

@kuranojo
好き男のかばねから骨を拾うタイプの夢女。