「書く習慣」2023-9月ログ

2023/9/30 15:26:22

家へと帰る。 静寂に包まれたこの家は、一年前は人で溢れていた。 次第に皆が独り立ちしていって、残ったのは私だけになってしまった。 「ただいま……」 返事はない。当然わかってたのについつい言ってしまう。 うるさいと思っていたあの日々も、今は少し恋しいな。

2023/9/29 12:33:27

「お前なんか、誰にも幸せにできない」 別れ際に放たれたこの言葉が、脳裏に突き刺さって抜けない。 幸せになれなかった腹いせなのだろうとは思うけれど、きっと私は幸せにできない不幸の存在なんだという呪いが解けない。 きっとこれは、一生解けることはないのだろう。 そう思っていたのに。 「いやそれ、あんた悪くないよ」 ふとした拍子で連絡が来た友人から、バッサリと言い放たれた。 「え……?」 「どうみても幸せにできなかったアイツが悪いじゃん!男のくせに捨て台詞とかなっさけな……とりあえずさ、アンタが幸せにできないとか、そういうの悩んじゃダメだよ。人は誰でも幸せにできるもんなんだからさ」 そういって友人はタバコを手に取り、一服した。 「……うん、気いつかわせてごめんね、ありがとう」 「この言葉が素直に受け取れないんじゃ重症だな。ま、アイツのことなんて忘れてパーッと遊び行こうよ」 私の発言を遮るような友人の言葉に、私は静かに頷いた。

2023/9/28 12:21:52

雨の日の午後、空港で待ち合わせた。 しばしのお別れをするために。 悪天候ではあるが、今日は予定通りフライトするらさい。 私は延期すればよかったのに、と内心思っていたのに。 「じゃあ、そろそろ行くね」 それを知ってか知らずか、彼は搭乗するために荷物を手に取って歩き始めた。 「うん、それじゃまたいつか」 私は離れたくない思いを抑え込みながら、いつも通りに接した。 飛行機が空を一直線に進んでいく。 きっとこの雨も届かない上空へと旅立っていくのだろう。 私は傘を手に取り、空港をあとにした。

2023/9/27 12:20:51

秋の夜長に狐がとおる。 最近月を見上げることは減ったけど、秋口の満月の日はなんとなく庭先の網戸を開けたくなる。 雲ひとつない夜空に、立派な満月がぷかりと浮かんでいると心なしか幻想的な気分になる。 酒と少々のつまみを持って縁側に腰掛ける。 ふとがさり、と庭藪から音がする。 おそらくは出てこないであろうが、腹を空かせて狐でもやってきたのだろうか。 私はつまみの肉を少し取り出し、茂みへと投げる。 穏やかな秋 月夜が導いた出会いに、思わず空を仰ぐ。

2023/9/26 12:15:57

揺れる電車の窓から見える故郷の景色が いつか懐かしいと思える日が来るのかな

2023/9/25 12:30:27

形のないもので身近なものというと、言葉が思い浮かぶ。 どうしてもモノにはできないその音の、微細なニュアンスや声色の違いからも変容するそれは人の心を巧みに操り、救いにもなったり時には言葉のナイフとして突き刺さる。 その形のないもので、人の心は動かせる。 だから、私は小説を書くのが好きなのだと思う。

2023/9/24 14:24:41

久しぶりに母校へと訪ねた時、砂場のところにジャングルジムが無くなっていたのに気づいた。 なんでも、場所の維持費と危険度が釣り合わないからやめたのだと。 そう考えると理にかなっているが、私としては少し寂しい気分になった。 頂上まで登り切った時の景色と、誰にも邪魔されないような無敵感。 あの景色が、今の子供達が見れないと思うと少し勿体無い気分になった。

2023/9/23 11:12:38

私はネガティヴだから、何かするたびに声が聞こえるんだ。 「どうせ上手くいかない」だの「そんなことしたら迷惑がかかるからやめろ」だの。 それは誰でもない声で、本当は誰もそんなこと言っていないのはわかっている。 だけど、そんな微かな声すら気にして、一丁前に落ち込んでしまうんだ。 これもまた、私の良くないところなんだな。

2023/9/22 12:22:53

夏休みが終わり、二学期が始まった。 旅行に行ってたのか日に焼けているやつもいれば、夏休みの間に彼女を作って色恋立つクラスメイトたちも増えてきた。 そう考えると僕の夏休みはお盆に田舎帰ったりしたけど平々凡々で少しもったいなかったかな、と少しだけ後悔しながら借りていた本を返しに図書室へと向かった。 本を返し、新しい本を物色する。みんなはラノベとか漫画とか読みたがるけども、僕は少し外れのとこにあるマイナーな本とかを読むのが好きだ。 今日も続きものの本を借りにいきたいのだが……。 「あーあ……」 マイナーたる所以か、僕の目当ての本は本棚のはるか上階へと位置が変わっていた。 夏休みでまた在庫整理をしたのだろう。もう人気作に押されつつ僕の本はいつか置かなくなってしまうのだろう。と残念な顔をしつつ受付の脚立を取りに向かおうとした。 その時。 「あ、脚立使うなら、私の本も取ってくれますか?」 隣で背の小さい女子生徒が話しかけてきた。 夏休みは終わったけど 僕の恋は、秋に始まるのかもしれない。

2023/9/21 12:22:42

大事にしたいものは、いつも胸の中にしまってある。 たとえ手放したとしても、心の中にいつだって見守っているのだから。

2023/9/20 12:26:45

柔らかな布団の感触が全身に染み入る。 あこの優しさはどこから来るのだろうと考えつつ寝ぼけ眼を擦るが、身体が起き上がらない。 また寝ていたいという私の心がそうさせているのかもしれない。 今日は休んでしまおうか。その考えも頭をよぎる。 ああ、このまま時間が止まったらいいのに、私はそう思った。

2023/9/19 12:23:22

満点の星空、ムードのあるライトと上品な音楽。 高層ビルの高級なホテルのレストランでバースデイディナー。 サプライズでケーキをつついているときにふと差し出される指輪。 「結婚してほしい」 「……よろこんで」 そんなベタなプロポーズだけど、多少は憧れる。

2023/9/18 12:01:14

色とりどりの花畑があたり一面に広がっている。 見慣れないその場所に思わず目を擦ると、ぼやけていた視界がクリアになっていき私はさらに驚いた。 花以外には何もなく、柔らかな風が頬を撫でる。 ここは黄泉の国だろうか。私は頭を抱え、必死に記憶をなぞり始めた。

2023/9/17 13:19:02

空が泣く、私も泣く。 雨に紛れて涙が見えなくなるから、ちょうどいい。 悲しい空はまるで私の心を映し出す。 空にいるキミと、私の涙雨。

2023/9/16 10:35:25

君からのLINEを見た瞬間、私はベッドの上から跳ね上がる。 なんだっていい。「今暇?」だけでもいい。 君は気づいていないかもしれないけれど、君からの言葉を受け取るだけで私は天へと昇る感覚だ。 まだ早いかな。そろそろかな。というタイミングで私はLINEを返す。 「何?わたし忙しいんだけど^^;」 本当は全然暇だけど。私は重い女だから、好意があると思われないように。 そしてまた既読とメッセージの間をドギマギしながら見守るのだ。

2023/9/15 12:23:11

この命、燃え尽きるまで生きよう。 たとえそれが何も生み出さなかったとしても、無駄な死なんてひとつもないのだから。

2023/9/14 12:53:41

早く起きすぎてしまった時の、夜明け前の薄明かりが好きだ。 日中とは違う冷え切った空気が、人のいない街路を抜けている。 澄み切った風の心地よさと、まだ眠気の覚めない視界とが混ざり合って、まるで日々の慌ただしい空気から抜け出したような感覚を覚える。 そしてまた眠り、微睡の中へと誘われていくのだ。

2023/9/13 12:26:54

本気の恋? まあそんな言葉、よく言えますわね。 今度は本当にホントだから大丈夫だって? いや、その言葉何回目よ。 はぁ、まあ、あなたのその恋多き所は見てて飽きないけども、失恋するたびに死ぬほど落ち込むのはおやめなさいね。あなた慰めるのはいつも私なんだから。 私の気になってちょうだいよ。 ま、そこまでいうなら頑張んなさいな。 私はいつも見てるからね。

2023/9/12 12:24:15

「え、もうカレンダー貰えないんですか?」 驚く私の目の前に立っている新聞屋さんが申し訳なさそうな顔をした。 「ええ、こちらも不況でね……経費削減と相成りまして」 「そうですか……」 私は頷きながらも、少し残念な気持ちになった。 いつも実家の今のコルクボードには、新聞屋のカレンダーを飾ってたからだ。 シンプルかつかなり書き込めるようになっているそのカレンダーは、いつの間にか実家の象徴となっていた。 そりゃ最近は子供も独り立ちしていき、世間はスマホ主体のスケジュール管理になって書くことが減っていっていたが、無くなったらなったで、私はスコンと穴が空いたように寂しくなっていった。 「じゃあ買わなきゃな……あーあ、せっかくだし、可愛いの買おうかな」 私はため息をつき、文具屋へと出掛けていった。 ……その先で推し(万年筆)に出会うのだが、これはまた別のお話。

2023/9/11 12:16:28

好きであればあるほど、それを失った時の喪失感は計り知れない。 嫌で離れた筈なのに、いざ居なくなってしまうと胸が張り裂けそうな気持ちになる。 もう忘れたいのに。

2023/9/10 11:44:52

明るい色の布地に、当時の流行りのアニメキャラのアップリケ。 少し不恰好なシルエットのそれを、いまだに私は捨てられない。 大人になったから着けるのが少し恥ずかしいけど、母が大切に家のミシンで縫っていたのを知ってる。 世界に一つだけの、大切な帽子なんだ。

2023/9/8 12:27:14

踊るようなもの、というとお好み焼きの上の鰹節が連想される。 熱々の鉄板の上で焼かれたふわふわのお好み焼きにソースとマヨネーズを塗りたくり、〆に青海苔と鰹節をふりかけるとその上で踊るように揺れるのだ。 焼き上がってそれを切ると、ザクっとしたキャベツの食感と柔らかに包み込む生地とが油でツヤツヤと光って非常に食欲を唆られる。 よし、君たちもお好み焼きが食べたくなってきただろう。私もビールで一杯いきたくなったな。

2023/9/7 12:25:56

12時を告げる時計の音が鳴り響く。 蜜月の時はもう終わりだ。名残惜しそうに彼は私から腕を離れる。 「じゃあ、また明日ね」 彼はそう言ってタクシーで帰っていった。 行ってほしくなかったけど、物分かりが良いことだけが取り柄の私は素直にその言葉を飲み込んだ。 いいんだ。明日も会えるから。 ……だけど。 私は慣れないロングスカートの裾を摘み、ヒールの覚束ない足取りで翻って帰路に着く。 途中でガラスのショーケースに映る自分の顔を見る。 ……このままでいいんだろうか?

2023/9/6 12:20:54

子供の頃、海に連れてってもらった。 その時に集めてた貝殻は、いまだに実家の押し入れに眠っている、かな?流石にもう捨てられてるかな。 もしあったとしたら。何の回なのかもよくわからないその貝は、化石のように家のどこかを漂っているのだろうか。 堆積する、海のかけら。

2023/9/5 12:37:42

学校の帰り道。 「あたしたち、全然青春してないよねー」と言い合っていたあの時。 確かにあたしたちは部活もなんもしていないし、彼氏がいるとか浮わついた話もない。 ただゲームして、授業受けて、放課後たいした大きなこともなく帰り道を歩いて。 もったいないなあと今なら思う。だけれども。 この瞬間、この時間は確かに青春の煌めきがあったはずなんだ。

2023/9/4 12:33:02

日々のLINEとか、会話とか。 問題から目を逸らすところとか、取り合わないだとか。 些細なことで関係が崩れてしまう。 せっかくキミと付き合ったのに、まだ試練は残っていたんだ。

2023/9/3 13:05:50

気分が沈んでいる時は、まるで当てのない暗闇の中を探っているようだ。 どこに答えがあるのかわからない。然とした先の見えないその道を、歩いていくのだ。 その時に。仄かでもよいから灯火を持っていると、その先が見えるようになるだろう。 それは遥か先にあるかもしれないし、ひどく身近にあるかもしれない。 まあ、それに気付けるかどうかは、自分次第だけれどね。

2023/9/2 9:28:08

開けないLINE 開けないメッセージ。 既読なんかにしたらまたなんか言われそうで、どうしても見ることができないキミの通知。 どうしようと悩んでいるうちに、他の通知と混じって消えてしまった。 これで、良いのだろうか。 キミのと関係は。

2023/9/1 9:56:38

完璧な人なんていない。 それが当たり前に認知されてる世界で、僕らは不完全に生きている。 不完全な自分を認めて、咀嚼する。 そうやって折り合いをつけて生きづづけるのだ。 もちろん、それができないという人もいる。 だけど、あまり自分を責めないで欲しい。 不完全な一方で、完全に駄目な人間というわけでもないのだから。

@kurenaikoh
厨二の抜けない創作者の備忘録とエッセイ。主にアプリ【書く習慣】の月次ログを載せます。