でも、一緒で嬉しいよ

kurinoki/natsuki
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 黒くたなびく尾、尖った角、血のように赤い瞳。まさしくそれらのすべては悪魔であった。見た目が昔の恋人だったこと以外は、悪魔だった。

「…貴女のためならすべて差し出すと言った。私は、私はとても悲しい」

「なぜ」

「死ぬのは私だけでよかった」

 空中に浮かんでいた身体を沈ませ、しょげた顔を見せた悪魔は、まさしく彼女そのものだった。

@kurinoki
最近は短文を不定期更新。ねこがすき。