彼岸にはない

kurinoki/natsuki
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 風に手折られてしまった彼岸花は、二度と頭を持ちあげることはないのだ。

 そう、なんでもよかったんだ。君と喧嘩して口が聞けなくなったとしても、もし君と関係を持てなかったとしても、生きてさえいたら。どこかで笑って生きてくれていたら。それだけだったのに。

「絶対、運が良かったねなんて言うなよ。お前も運が悪かったなんて訳じゃないのに、なんで」

 冷たくて硬くて、つるつると爪を滑らせて、涙を少し落としてから、なんとか立ち上がった。

@kurinoki
最近は短文を不定期更新。ねこがすき。