顎の雫、口に入らぬは

kurinoki/natsuki
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 手に入れたい物こそ手に入らないということを、僕はよく知っていた。知っていたはず、なのに。

 何度間違えて思い上がれば気が済むのか、もう分からなくなっていた。例えば中学校の時の委員長決めとか、初恋の女の子とか、給料日になったら買おうと思ってたぬいぐるみとか。

 手に入りそうなものに限って、ギリギリ届かなくて、でも欲しくなって、また沈む。

(あぁ、人生って、こんなもんか)

@kurinoki
最近は短文を不定期更新。ねこがすき。