
公式によるゲーム紹介(Steamより)
「『けものティータイム』はケモミミがあたり前に存在する世界で、喫茶店を舞台にブレンドティーのシミュレーションとKAWAII物語を体験できます。この世界でひとらしく生きるには、甘いティータイムとKAWAIIの癒やしが必要不可欠。メロディアスに、可愛く、最後までひとらしく生きましょう。しかし――でも、人生は限られたもの。幸せのあとは、切ない。喫茶店におとずれるケモミミたちが、癒やされ、救われ、KAWAIIひとときを過ごし、どのような最期を迎えるのか?
それはあなた自身の目で確かめてみてください。」
ネタバレしない程度にこのゲームについて書くならば、以下の通りです。
・ゲーム性は『CoffeeTalK』に近いものを想像するとわかりやすいです
・かわいいだけを期待すると後悔すると思われます。私は情緒を破壊されました
・でも、かわいいところはしっかりかわいいです
・ゲーム的な難易度は低いですが、実績全解除は地味に辛そうです
・エンディングまでのプレイ時間は10時間程度でした
ここから先は、ネタバレ全開でつらつらと書いていきます。
これからプレイ予定の方は先にゲームをプレイしてからご覧になることを強くおすすめします。
1.ゲームについて
とても良作だと思います。ただし、先述のとおり、かわいいだけを期待すると後悔すると思います。公式でもこんな注意がありますからね。

個人的にはカワイイだけでない部分含めて、とても良いゲームだと思いました。
元々Blueskyにて「ウチの子けもみみちゃんを[編集済み]したい!」という程度にはけもみみが好きなのですが、こんな世界観のけもみみもあるのか!と新鮮さとそれを超える切なさを体感できました。
(1)良かった点
①とにかくかわいい
「カワイイだけでない」とは言いますが、かわいいところはしっかりかわいいので癒されつつ楽しむことができます。特にドット絵な立ち絵が魅力的です。
また、基本的に主人公以外は全員けもみみです。けもみみ好きな自分にはとてもたまらない世界です。(すぐにそんなこと言ってられなくなりますが)

ドット絵な立ち絵は表情もころころ変わって楽しくかわいいです

起動時のロード画面もかわいい

理由はいらない。かわいい

かわいい以外にもいい感じの兄ちゃんや渋いおじ様なけもみみもいます
②BGMも良質
立ち絵だけでなく、BGMもかわいらしくポップな雰囲気のものが多くてとても良いです。終盤の重要なシーンではしっかり重めな雰囲気のBGMが雰囲気を盛り立てて場面にマッチしています。
③ストーリーが良い
詳細は後述しますが、ストーリーがとても引き込まれます。「カワイイだけでない」辛く切ない展開が続くわけですが、心にぶっ刺さってきました。
(2)あまり良くなかった点
このゲームは『CoffeeTalk』のように、客の好みに合わせたり要望を聞きながら紅茶の茶葉とハーブを選び、ブレンドして提供するというのが一連の流れとなっています。それ自体はいいのですが、間違えても好感度の上昇に影響する程度で、そこまでのゲーム性は感じないので、終盤は少しダレる部分があるかなーと感じました。逆に言えば、難易度も低くて取っつきやすくはありますが。
また、要求される茶葉やハーブについて、入手するのにランダム性が関わっているため、結構終盤まで持っていないということもザラにあります。それなのにどんどん要求されるので少しモヤっとしたりもしました。
さらに、経営要素も資金は調理器具と素材の購入に使用するのみで、これらは一度入手すると永久に使えるため、経営部分も弱く感じます。資金0になってもゲームは問題なく進行していきます。まあ、調理器具と素材を全てそろえようとするとそれなりに工夫が必要になりますが……。
最後に、一部の会話ではマカロンが隠れてしまうことが多く、せっかくかわいいのに勿体ないと感じることも多かったです。

こんな感じでマカロンがいるんですが、

こういう風に隠れちゃうことが多いです。(キッシュもかわいいけど)
テンポについて多くの人が指摘しているように見えますが、自分はさほど気にならなかったですね。
2.ストーリーについて
そろそろ本題であるストーリーについて語ります。
このゲームはちょっと抜けているお姉ちゃんである主人公「タルト」とかわいいねこみみが生えたしっかり者の妹「マカロン」が「ラペット」という街で3週間だけの間喫茶店を営業するという内容になっています。

で、開始直後にこんなメッセージが出てくるわけです。

「最後」じゃなくて「最期」。この時点で嫌な予感しかしません。
そして、ゲーム中で見られる用語集には「パンデミック」や「行政が崩壊」などの不穏なワードがちらちらと見えます。
「カワイイだけではない」ってこういうことか……とある程度察しながら進めていくわけですが、基本的にはかわいい要素が満ちています。



キャラクターもお茶もお菓子もかわいいですね。
こんなかわいい要素に癒されつつタルトたちのやり取りを楽しむわけですが、やはりちらほらと嫌な予感を覚えさせるものが出てきます。
ユニコーン風のけもみみ「マシュ」の前ではけもみみじゃない人間の話題はNG、「旅立つ」というなんとなく別な意味を持ちそうなワードなどがそれにあたります。

少し進めていると、マシュの体調が悪化していき、遂には亡くなってしまいます。このことをラペットでは「旅立ち」と表現しています。マシュが旅立った段階で用語集が更新され様々なことが明かされます。
・この世界はケモノウィルスによるパンデミックで文明が崩壊している
・ケモノウィルスに感染するとけもみみが生えてくる。致死率100%の不治の病
・更にストレスなどの要因により尻尾が生えてくると、1か月程度で死に至る
で、ゲーム開始時点ですでに尻尾が生えてるキャラクターがいます。主人公の妹マカロンもその1人です。

尻尾自体はこんなにもかわいいのに……。
ここで嫌な予感がして、マカロンのプロフィールを見ると「12月に入ってから尻尾が生えた」とのこと。そして、ゲーム内日付はこの時点で12月17日。マカロンの誕生日は1月1日。この喫茶店は3週間の期間限定営業……。様々な要素が脳内でつながり、嫌な結末を連想させます。つまり、そういうことじゃん!!と。
この予想される結末を見るのが怖くて、なんと2か月も放置してしまいました……。(愚かな労働のせいも少しありますが)
しかし、このまま放置し続けるわけにもいかないので、覚悟を決めて一気にエンディングまで進めることにしました。
その結果、無事に情緒が破壊されましたが……。
しばらく進めていくと「旅立ちの兆候」という項目が追加され、それによれば頭痛や冷え性、不眠などの症状がそれに該当し、特に頭痛が現れると2、3日後には旅立つということになるらしい。
当然、マカロンにもそんな兆候が表れてくるわけですが、これを見るのが本当に苦しい……。


救いは……救いはないんですか!!
そして、タルトとマカロンは事あるごとに「笑顔で幸せに」と繰り返します。
いずれ旅立つマカロンが笑顔の自分を思い出してほしい、というものですが、これがある種の呪いのようになってしまっています。そのせいで、タルトは相当な無理をしていたりもするわけです。作中ではうっかり者なお姉ちゃんとよく言われてますが、立派でできたお姉ちゃんだと思います。


ここ本当につらかったので、これになってしまっていた。

とてもつらい。

やっぱ辛えわ……。
このあと、タルトとマカロンがどんな結末を迎えるのか、ぜひ実際にゲームでご覧いただきたいと思います。
3.最後に
久しぶりにゲームで情緒を破壊されました。
覚えている範囲だと数年前にプレイした「OMORI」が割と情緒を破壊してくれた記憶があります。それくらいぶりの感覚でした。
先述のとおり、元々けもみみという属性が好きで、いわゆるウチの子を作り出して日々妄想を楽しんでいたりするわけですが、こんなにも辛く切なくシビアな世界観のけもみみもあるんだなと、ある種の新鮮さを体感できました。
けもみみが好きなだけに、一層切なさを感じてしまった部分があるようにも思えます。
でも、そんな世界でもタルトやマカロンはじめ、ラペットの住民たちは健気に日々の幸せを噛みしめながら生きています。
そして、思いが強ければ強いほど切なくて、切ないと一緒に生きていく。
これらは言ってみれば「死別」をテーマにしているわけで、古今東西これをテーマにしたゲームは多数あると思います。
そんなゲームで久しぶりに心を揺さぶられたのがこのゲームでした。
このゲームと出会えて良かったと思います。

思わずポケモンSVのハッサクさんになりかけました。
「今を噛み締めて笑おう。幸福な旅立ちのために。」