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2026衆院選『恥知らずな国に暮らして』

黒犬
·
公開:2026/2/1

 自分が住んでいる地域にも参政党の候補者が立候補した。

 2026衆院選。まあ高市総理が解散総選挙に踏み切った理由についてとか、唐突に誕生した中道改革連合とか、色々言われている事はある。でも自分にとっての関心は、一部で報じられている『参政党が議席を増やす』という見込みについてだ。

 参政党のHPを見ると、『僕らは日本をあきらめない!』というスローガンがトップに書いてある。妙に懐かしいフレーズだと思う。というのも、『日本を、あきらめない。』というスローガンを使ったのは、岡田代表時代の民主党だった。2005年(平成17年)の第44回衆議院議員総選挙。小泉内閣が郵政民営化の是非を争点にし、後に『郵政選挙』と言われる事になる選挙。(そしてこの時、岡田民主党は64議席減という大敗を喫した)

 それから20年が経った。あの時民主党が諦めたくなかった日本と、今、参政党が諦めたくない日本は、きっと全く違う姿をしている。

 参政党のHPには『3つの重点政策』が掲げられているけれど、そのひとつが『国のまもり 日本の舵取りに外国勢力が関与できない体制づくり』だ。そしてその中には『移民受け入れより、国民の就労と所得上昇を促進!』と書かれている。

 日本で暮らす外国人とのトラブルを抱えている人は、まあいるんだろうと思う。同じ日本人同士だって近隣トラブルは割とあるのに、文化や風習が違う人々と、同じ地域で共生しようとすれば、それは当然何かしら揉める。自分はそういう個人間のトラブルを訴える声を無視するべきではないと思っている。本当に。ただ一方で、大雑把に「外国人は日本から出て行け!」と声を張り上げる権利が自分達にあるんだろうかとも思う。それは恥知らずな言葉なんじゃないか。

 昔話をする。昔話と言ってもせいぜい10年前の話だ。

 少しだけぼかして書く。当時、自分はとある製造業の会社で働いていた。日本国内に無数にある、大手企業から仕事をもらう部品下請けの中小企業だ。取引先の大企業は、日本人だったら絶対知っているというレベルの会社だ。自動車産業で言えばトヨタの様な知名度かつ世界的なシェアを持っている会社だと思ってもらっていい。そんな大企業から仕事を受けて部品を納入する、小さな工場だ。

 その工場で作っているものをズバリ言ってしまう訳には行かないのだけれど、当時業界全体としては斜陽で、最終的な製品もこれから少しずつ需要は減って行くんだろうな、という類のものだった。これが自動車の様に生活に欠かせないもので、国の基幹産業に位置付けられる様な業種なら多少話は違ったのかもしれないとは思う。残念ながらそうじゃなかった訳だけれど。

 景気の悪さ、内需の冷え込み、後はデフレ。生活必需品でもないその製品は、ある程度安くしないと庶民には買ってもらえない。外国製品との価格競争もある。そんな中で製品の価格を下げるには、製品を構成する調達部品の価格を下げる必要も出てくる。ウチの工場で作っている部品も当然そのひとつだ。

 仮に、部品1個あたりの単価が10円だとする。値下げ要求は毎年ある。ただ、1個10円の部品を1円値下げする様な事はできない。だから大企業は「10銭(0.1円)値下げ」とか「数銭値下げ」とか、1円以下の値下げ要求をしてくる。更に言えば、もっと前から大企業は部品工場の拠点を海外(中国、東南アジアなど)に移していて、国内の工場に発注できない様な金額の仕事はそっくり海外生産に切り替えてしまっている。そういう仕事は元々単価も安いのだけれど、工数が少なくて大量生産が求められる様な「簡単だけど安い」類の仕事で、それはそれで中小の部品下請けの売上をかなり支えていたものだ。で、それがそっくり海外に持って行かれた結果、国内の部品下請けに回ってくる仕事といえば「難しくて単価もそこまで良くないうえ、製造数も少なく納期も短い」様な、言ってしまえば『クソ仕事』が中心となって行く。試作品だけ少量作らせて、肝心の量産品の依頼は来ないとかね。

 『クソ仕事』とは、下処理、中処理、仕上げ処理みたいに何工程も製造工程がある上に、手作業の工程があって機械化できなくて、不良率も下がらない、そんな部品の生産だ。そんなに手間がかかるなら、仮に1個あたりの単価がそれなりに高くても、何の意味もない。出荷品に不良品が混入してはメーカーに呼び出しをくらい、あれこれと詰められる。そんな仕事。「簡単だけど安い」仕事があった頃は、その簡単で安い仕事を任せる事で若手を育てる事もできたし、その売上でクソ仕事の負担を吸収できたりもしていたものが、国内にクソ仕事しかなくなった訳だからどうしようもない。

 そんな中小企業が社員に高い給与を払える訳もなく、まともな労働環境を提供できる訳もない。給与は安く休みは少ない。派遣会社にさえ渋い顔をされる。新卒で採用できるのも高卒のみで、彼らも1年経たずに辞めて行った。4月に高卒の日本人を5人採用して、5月か6月には1人辞め、その年に残るのは良くて1人、普通は全滅みたいなブラックさだった。サービス残業上等、タイムカードを押してからがもうひと頑張りだ、みたいな職場でまともに働く奴の方が異常だ。直接それをやらせているのは自社だが、そう仕向けているのは発注元の大企業だ。

 そこで登場するのが『外国人技能実習生』だった。

 最初は中国人を雇ったらしい。自分がその会社に入る前の話だ。工場のトイレ掃除は当番制なのだけれど、そこに中国語で書かれた「トイレットペーパー以外のゴミをトイレに流すな」みたいな張り紙だけが残されていた。社長が中国人を雇うのを諦めたのか、向こうから来なくなったのかは知らない。そして次に、タイ人の女性たちがやって来た。

 技能実習生として来たタイ人女性数名は、社宅として借りたアパートで共同生活をする様に言われた。この田舎で必需品の自動車はなく、会社が送迎する訳でもない。買い与えられた自転車で、雨の日も雪の日も工場まで通う。手取りはほぼ最低賃金。「技能実習生は学びに来ているのであって稼ぎに来ているのではない(労働者ではない)」みたいな適当な理由でそうなっている。じゃあ実習生としての技能はちゃんと教えているのかと言えばそんな事もなく、試験前に付け焼き刃で教えるだけで、普段やらせているのは製品の検査だったりする。毎日不良品の目視検査だけで、本来教えなければならない製造技術の、何の技能が身に付くと言うのだろう。

 自分はこの外国人技能実習制度について詳しい訳じゃない。彼らに支払う賃金や技能試験に関わる制度がどうなっているのか詳しくは知らない。辞めた今となっては、会社は何とか違法にならない範囲で上手く回していたのだろうと思うだけだ。

 ある時、実習生の自転車がパンクした。実習生はどうすれば良いのか分からない。誰に修理を頼むのか、それにはいくらかかるのか、そもそも日本人相手に上手く説明できるのか。そういう細々とした問題に対処するのが自分の仕事のひとつだった。会社や自分に対してすまなそうにする実習生の姿を見て、いたたまれない気持ちになった。

 母国を離れて日本に実習に来て、心細さもあるだろうに、教わる予定の技能はろくに学べなくて、日本人の派遣やパートと変わらない仕事を任されて、最低賃金を受け取る。その少ない賃金から家族に送金もしていたのだろうか。一定の期間が過ぎて実習が終われば母国に帰らなければならない。日本に住み続ける権利も与えられない。今は技能実習生として日本に来て、やがて永住権を得る道も無くはないと言うけれど、技能実習生だった期間は永住申請の「10年在留・5年就労」の期間には含まれないらしい。色々とハードルがあるものだ。

 それは実習生本人の希望だと言う人がいる。彼らは全部納得ずくで日本に来ているんだからと。本当にそうか?

 日本人でも耐えられない様な労働環境で働いてもらっておきながら、永住権のハードルは高くする。若い間、働ける間は日本に呼び寄せて、いずれ母国に帰ってもらう。『日本人が若い間外国で過ごし、老後だけ日本に帰って来る』様な事は白眼視して叩くのに、その逆パターンの外国人技能実習生は都合よく呼び寄せて安く使う。「自分たちは連中にものを教えてやっている」みたいな上から目線で。誰が考えたのか知らないけれど、この外国人技能実習制度を考えた人物(もしくは後年に制度を悪用できる様にした人物)は相当悪知恵が働くと思う。日本人が、特に雇用主が損をしない制度になっている。その代わりに、これまでの日本の国際的な信用を切り売りし、食い潰す制度でもあるし、それこそが金銭では取り戻せない大きな損失なのだけれど。

 自分は日本人で、日本が好きだ。でも、こんな日本は、こんな恥知らずな国と国民は大嫌いだね。

 その工場で働いていた時に、不良率を下げるための取り組みだと言って、社外監査役の様な人に来てもらっていた事がある。これまた日本で製造業に携わっている人なら絶対に社名を聞いた事があるだろうという大手企業の役員だった方だ。彼の武勇伝は中国に工場を立ち上げて成功させた事で、「自分たち日本人がいかに『物を知らない中国人』を教育し、まともな労働者として使える様にしてやったか」という話を誇らしげに語る。

 中国の山奥の田舎から、着の身着のままでバスに詰め込まれて面接に来た人達に、とりあえず飯を食わせ、身なりが汚いからと風呂に入れてやり、それで採用してものを教え、躾をし、金に困っていると聞けば給料を前借りさせてやり、使える労働者に育ててやったという武勇伝。それでコストを下げて会社に貢献したんだという誇り。その製造業全体の大規模な海外移転の結果、中国工場に仕事を奪われた自分たちの会社が、今こうして頭を下げてああしろこうしろというそのお偉いさんのご高説を平伏して聴いている。何の冗談だ? 10年前がこれで、今現在がどうなってるかなんて考えたくもないけど、実際にトヨタは2025年の10月から、取引先企業に対する値下げ要請を4年ぶりに再開したらしいね。トヨタがやるなら他の企業だって当然後追いするでしょ。

 毎年1円以下のコストカットを迫られ、締め上げられ小突き回され、そんな日本人すら嫌ってやらない仕事を今度は外国人技能実習生に押し付け、それで回っている『メイドインジャパン』が何だって? トランプ大統領が被っているMAGAのキャップや、参政党のグッズにメイドインチャイナのタグが付いてて笑えるみたいな話があったけど、本当は全く笑えないんだよそんな話。冗談にもならない。そしてそんな赤だったりオレンジだったりするメイドインチャイナのグッズを身に着けて、『Make America Great Again』だの『僕らは日本をあきらめない!』だの『日本をなめるな』だの吠えていれば支持されて選挙に勝てて、権力の座に就けるってのがどれだけいかれてるか。どれだけ『恥知らず』か。

 

 別に間違っても失敗しても貧しくてもいい。反省してやり直す機会はまだある。ただ恥を知らない奴は反省もせず、今度はこれから先の10年をドブに捨てる事になる。

 あの時、自分は先に会社を辞めてしまったから、タイから来た技能実習生が最終的にどうなったのか分からずじまいだ。でも今の日本を見ていると、もう国に帰っていて欲しいと思う。技能実習を終えたら、就労ビザも永住権も申請せず、日本に愛想を尽かして、日本人を嫌いになって、「こんな国二度と来るか」くらいに思って、この国を去っていて欲しい。真面目な人たちだった。いい人達だった。だからこそ、今の日本にいるべきじゃない。そして次の選挙が、その答え合わせになるんだと思う。

@kuroinu2501
あまり吠えない犬です。