【吸死×銀魂二次創作】侍来たりて宇宙(そら)を飛ぶ(未完)

草川
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  • 銀魂の銀さんが吸死の世界に行く話。大体吸死20巻245死「みんなの心の中で生きているから一向にかまわんッッと思う!!」のパロディ

  • 銀魂の世界には新横浜が(まだ)ない設定

  • 途中から展開が思いつかなくなってしまって未完に

侍来たりて宇宙(そら)を跳ぶ

 その夜、目を覚ましたドラルクはジョンと共に棺桶から起き上がった。部屋は暗く、ソファベッドには毛布に包まったハネ放題の銀髪頭が見える。はて、今日は依頼が入っているという話ではなかったか。このまま寝ていれば遅刻である。全く仕方がない。起こしてやるから真祖にして無敵のドラルク様を畏れ崇めるといい。

「ロナルド君、いつまで寝ているつも、っ酒くさぁ!?」

「ヌァー!?」

 部屋の電気をつけ、毛布を取り払った下にはだらしのない寝顔をさらしている若造……いや若くはあるがロナルドとは似ても似つかない別人がいた。しかも酒臭い。驚いて死んでしまった。再生しながら毛布を戻す。なんだか以前にも似たようなことがあったような。具体的には20巻245死で。

 ダラダラとイヤな汗を流しながらもう一度毛布を引っぺがす。やはりロナルド君ではない。銀髪でボサボサな髪型な点だけは同じだがまさか親戚だろうか。むしろそうであってくれ。何度も毛布をかけたりはがしたりしてたせいか男が目を覚ました。

「なんだよさっきから人の布団を…………吸血鬼のコスプレしたおっさん?」

「本物じゃ!!」

 開口一番に死んだ魚のような目で失礼なことを言い放たれたショックで塵になり、ジョンの悲鳴が部屋に響く。

「うおっ!!? え、塵、えっ??」

「? ああこういう体質なんでお気になさらず」

「体質!? どんな天人!?」

「あまんと?」

 初対面の人に脅かれるのには慣れたものだが、聞きなれない単語に途中まで再生した首をかしげる。そこは吸血鬼ではないのだろうか。

「まぁいい。君はなんでひとんちで寝ているんだ。酒臭いしまさか酔っ払って勝手に上がり込んだのかね? 立派な不法侵入だが?」

「あーえーと確かパチンコですげー大当たりしたもんだから長谷川さんと飲みに行って…………だめだ思い出せねェ」

「不法侵入!」

「ハイハイ帰るって。てかここどこ?」

「新横浜だが」

 呆れて男に最寄り駅の名前を言う。流石に何度も異世界の人が来たわけではなさそうだと、内心ホッとしていた。

「新……? 横浜!!? かぶき町からめちゃくちゃ離れてるじゃねーか! マジかよ帰りの金あるか……?」

「歌舞伎町って東京ではないか。どんな酔い方したんだ君は」

「うるせー滅多にない大当たりだったんだよ。てかなんだよ東京って。江戸だろ。ギンタマンじゃねェんだから」

「は?」

 その一言に、一度引っ込んだイヤな汗が再び流れ出した。

「つまりここは新横浜で」

「うむ」

「天人がいなくてアンタみたいな吸血鬼がいて」

「うむ」

「俺はそのロなんとかってやつと入れ替わって異世界に来ちまったんじゃないかと」

「ロナルド君ね」

「……マジでか」

 この世界の説明と以前に来た烈海王の話を軽くしたところ、男……坂田銀時は驚きつつもあっさりと受け入れた。彼は歌舞伎町……ではなく"かぶき町"で万事屋を営んでおり、そこで変な事件やら騒動やらに巻き込まれることもあるので慣れているという。依頼を受けて仕事をこなすという点ではうちと似ているかもしれない。

 さらに銀時君の話によると、そちらの世界では信じがたいことに吸血鬼はいなく、天人と呼ばれる宇宙人が普通に町中を歩いているらしい。しかも時代はこちらで言う江戸時代末期。そして文明レベルはその天人によってもたらされた技術でこちらにとっての現代並みのようだ。ビルにもテレビにも驚かず、スマホは知らなかったが携帯電話は知っていた。

「ま、異世界はコラボで何度か行ったことあるし、作者がやりたいことやったら帰れるだろ」

「あっそれ言っちゃうんだ」

 元も子もないメタ発言にどうにも似たような世界観を見出しかけるが、そこで事務所の電話が鳴り響いた。

「はいこちらドラルクキャッスルマーク2。……あっロナルド君は今は……まあいいか。今すぐ連れて行くんで」

 ロナルド君が本日の依頼である「下等吸血鬼の巣の駆除」の現場に現れないという電話だった。結構大きめの巣だったので他の退治人と協力して進めることになっていたらしい。電話を切るとクローゼットからロナルドの赤い衣装を取り出して銀時君に差し出す。

「というわけでロナルド君の代わりに退治に行こうではないか」

「なんでだ!! それ着るの!?」

「前にここにきた異世界の人と似たようなことをすれば帰れるかもしれないだろう。ちょうど依頼もあることだし。あと作者が見たいと言っている」

「小説だから着ても見れねーだろ!!!」


 新横浜某所。鶴見川の流れる河川敷にショットは1人立っていた。

「……ああ、じゃあよろしく頼む」

 時間になってもロナルドが来ないため、何かあったのかと事務所に電話したところすぐに来るという。ドラルクが応対していたので仮眠したまま寝坊したのだろうか。珍しいこともあるものだ。

 事務所からここは近いしすぐ来るだろう。フックショットなどの装備の点検をしながら待っていると、やがて人影が現れた。

「やぁムダ毛フェチさん待たせたね」

「その呼び方やめろ。……誰!?」

 振り返るとドラルクと肩に乗ったジョン、そしてロナルド……の格好をしたいかにもやる気がなさそうな男が立っていた。しかも何故か腰に木刀を差している。

「誰って俺だよ、ドナウド君だよ」

「誰だ」

「私の名前と混ざってるじゃないか!」

「てめーらの名前が紛らわしいんだよ!!」

「ドラルク、ロナルドはどうしたんだ?」

 言い合いが始まりそうだったのを止めてロナルドの所在を聞く。銀髪で髪型は似ているとも言えるのであのビームも出せるロナルドの兄かと一瞬思ったが、こんな死んだ魚のような目をしているとは思えないので別人だろう。

「実はかくかくしかじかで……」

「こんなときに冗談を言ってる場合じゃないだろ」

 ロナルドはそこの坂田銀時とかいう男と入れ替わって異世界に行ってしまったとかなにを言ってるんだ。いくらなんでもありの魔都新横浜でも流石にそれはないだろう。

「しまった、烈さんのときはビキニとしか会ってないから別に周知ではなかった」

「ビキニ?」

「とにかく、ロナルド君は今すぐ来れる状況じゃないから代わりに銀時君と退治をやってくれ」

「いや、一般人に退治させるわけにはいないだろ」

「なァビキニって何の話?」

「……ビキニと聞いてピンと来ないなら、少なくともシンヨコの人じゃなさそうだが」

「銀時君、端的に言うと噛んだ相手をマイクロビキニにして操る吸血鬼だよ」

「ビキニってマイクロビキニ!?……え、じゃあボインのネーチャンとかも」

「言っておくが相手は老若男女関係なしでその吸血鬼はマイクロビキニを着た男だぞ」

 明らかに喜色を含んだ声音になったので先に現実を教えておく。

「変態じゃねーか!!!」

 ドン引きした男のツッコミが鶴見川に響いた。

……このあとなんやかんやで下等吸血鬼の巣の駆除やって銀さんは元の世界に帰りました。

「ただの打ち切りじゃねェか!」

「若造帰ってこねぇし!」

※1週間後には帰ってきました。

@kusakawab
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