四月二十一日(日)雨

朝起きたら体じゅうのあちこちが痛い。上から抑えつけられているかのように体が動かない。せっかく京都にいるというのに、行動し始めたのは昼を過ぎてからだった。雨も降っていたので、遠出はやめて近くにある銭湯を改装したカフェに行ってみた。

一人なのに四人がけのソファ席に通してもらい、「本当にここでいいんですか」と店員さんに確認した。目の前にはイヤホンを分けっこして肩を寄せ合って座っているカップルがいた。ぐぬぬ、と思ったが、ちらりと見えたスマホの画面に「太鼓の達人」が映っていた。彼らがいろいろなものから守られますようにと祈った。銭湯の壁の装飾などをぼーっと眺めていると、近くの席で大きな声が上がり、何事かと見るとスタッフさんに会いに来たらしき友人たちが誕生日プレゼントを渡していたところだった。スタッフさん、五体投地並に床に伏してありがとうと言っている。青葉市子のBGMも相まって、いつまでもここにいられるほど居心地も場の空気もいい場所だった。

カフェの近くに気になる食堂のようなお店があったので入店。カツ丼を注文し、待っている間に昨日教えてもらって購入した安達茉莉子さんの小説を読んだ。教えてくれた方が言っていた通り、「これはとんでもないものを読んだな」と思った。全ての感覚が開きすぎて、頼んだカツ丼を一口食べただけで嗚咽が出そうになった。蟻が歩いているのを見るだけでも胸いっぱいになりそうなほど。

帰り際、代金をぴったり差し出すと店員さんが「ちょうどくださるの? 助かるわぁ」と喜んでいた。ここのカツ丼がいままで食べた中で一番好きだと伝えると、「まぁ〜うれしい、主人にも伝えておきますね。ぜひまたいらしてください」とさらに顔を綻ばせていた。土砂降りの中を、弾む足取りで宿へ戻った。

@kusundatofu
いろんなところではみ出しながら生きています。郷土玩具、ラジオ、無駄なものが好き。