『哀れなるものたち』を観た。タイトルが「哀れな」ではなく「哀れなる」なのがいい。何を食べたらこんな設定を思いつくんだ、という話ではあったけど、たまたま今読んでいる小川洋子の『完璧な病室』に感じた甘美さにも通じていると感じた。想像以上に性的な場面が多かったけど、それを打ち消すほど映像も衣装もストーリーもよかった。性的なものと芸術は親和性が高い。ちょっとSF的な要素もあって、調度品とかも見惚れてしまうくらい素敵だった。純粋で無知な女を手駒にしたいというおぢの欲望剥き出しのシーンはきつかったけど、それがあったからこそベラがさらに思考を発展させてますます花開いていく様が気持ちよかった。主人公のベラは、何があっても自分を愛してくれる人がいるという絶対的な安心と、帰る場所があるという守られている感覚があるからこそ、あんな風に自尊心を保ったまま思いのままに振るまえるのかもしれない。あまりによかったから、幼少期以来久しぶりに映画のパンフレットを買った。
"Polite society will destroy you."といった台詞があったけど、社会規範からはみ出さないように正しくあろうとすることで個性は消える。そういう仕組みや規範から外れたところで生きていきたいと思った。
その後友人と合流し、シューティングバーに連れて行ってもらった。バイオハザードで使われているというハンドガンがあり、迷わずそれを選んだ。あまり手応えはなかったが、スタッフの人に「めちゃくちゃうまいですよ!」と褒められて気分がよかった。「FBI入ればよかった」と冗談を飛ばすと、「ええっ、いけてたんですか」と返され、確かにこの表現だと受かっていたのに行かなかったとも取られると納得した。的当てに使った紙は持ち帰らせてくれたので、新しい才能が見つかった記念に額縁に入れて飾っておこうと思う。「玄関に飾ったら魔除けになるらしいっすよ」とまた同じスタッフの人に言われ、そんな気がしてきて慎重に鞄にしまった。