初めてのキャリアカウンセリングの日。オンライン面談で、画面に映った人を見ると面接を担当してくれた人だった。あのときの緊張が蘇る。「リラックスしてざっくばらんに、お茶でも飲みながら話しましょう」と最初に言ってくれたが、やはり面接官も兼任しているだけあって謎の迫があり、ずっと肩に力が入っていた。「~だと思いますけど、どうですか」という投げかけが多く、言葉に詰まる場面が多かった。なぜこうも縮こまってしまうのだろう。気になっている求人があると伝えると、訓練期間中はアルバイトとしてその会社に潜り込んで、訓練終了後に正式に雇用してもらうという手もあると教えてもらい、また一つ新しい道が拓けた。思い切って応募してみようかと思う。カウンセリング時間の45分間中ずっと緊張の糸が張り詰めていたので、ようやく終えたときにはパソコンを閉じる手に自然と力が入った。こういう面談で受け答えができるような社会性は身に付けたと思うが、代わりに自分の一部分を失っている感覚がある。せっかく職業訓練にきたし、もうこの年だし、正社員でちゃんと働くことも視野に入れていると昔からの友人に話すと、「そんなことしたらあなたの良さがなくなっちゃう」と言われて少し引き戻された思いがした。
面談は午前中に設定していたので、落ち着くためにもいったん昼ご飯にしようかと思ったが、あまりの天気の良さに洗濯機を回すことした。待ち時間で、今月のイベントに向けての交通手段を予約しようといつも利用しているバリ得こだまを見にくと、今月から値上げしていて片道1万円を超えるようになっていた。4~5時間かかるのに片道1万円超えはやってられないと思い、航空券に切り替えてみるとPeachが片道4000~6000円くらいだったので今回は飛行機で行くことにした。予約内容に間違いがないか何度も入念に確認し、確定ボタンを押す。この瞬間は毎回心臓がきゅっとなる。移動手段を抑えることができ、また一つ前に進んだ実感が得られた。あまりに確認に時間をかけすぎて、昼時はとうに過ぎてしまっていたので、ライ麦入りのイングリッシュマフィンと昨日の残りのミネストローネで簡単に済ませた。
夕方母親が帰宅し、カスハラ対策のニュースを見て「なんでもかんでもハラスメントって。息苦しい世の中になったねぇ」と言うのを背中越しに聞く。夕食には鰯の煮付けを作った。一応レシピを見ながら作ったが、途中勘で醤油と砂糖を足して所定の時間よりも長く煮詰めたら、ようやく理想の煮魚が完成した。料理は経験と勘が物を言う。夕食時にzineのイベントに出られることになったと両親に伝えると、手を叩いて喜んでいた。「おめでとうでいいんよな」と確認する父。
夜、新刊を作るためようやく原稿の整理に手をつけた。案外入稿のデッドラインが迫ってきている。前回の反省を活かし、今回は縦書き原稿の作成にエディタを使うことにしたので大幅に手間が省けそうだ。表紙の用紙や遊び紙を選ぶ作業など、本づくりは楽しい。新卒で印刷会社に入っていて本当に良かったと思える瞬間。あのときはたまたま声をかけてくれたのが印刷会社だっただけで、まさか10年ほどあとになってここまで役に立つなんて思ってもみなかった。まわり道だと思っていた道がちゃんと正しい道だった。でも、そう思えるようになるには時間がかかるし、逆に失敗したと思うかもしれない。ただ、導かれる場所には必ず意味があるとは言える。導かれる方向に進むかは自分の意志次第だが、少なくともその導きを信じてみてもいいとは思う。
今日聞いていた中川家のラジオのゲストにジョイマンが出ていた。伝説のサイン会0人事件から10年、当時は解散の話すら出たが、あの出来事を恥ずかしがらずに公表しネタとしたことでいまがあるのだという。もし今月のイベントでzineを買ってくれる人が0人だったとしても、それすらも笑いにかえてジョイマンのように不死鳥になりたいと願う。