土門蘭さんのトークイベントに参加するため、久留米へ。道中、黄色や白の花が咲き乱れている河川敷を走って、あまりの美しさに写真を撮りたいと思ったものの後続車が来ていていったんは停車を諦め通り過ぎた。でも、写真を撮りたい気持ちより後続車を邪魔しないことを優先してどうする、もしそういう道で車が停車していたとして、ただ避ければいいだけではないかと思い直し、まわり道をしてもう一度今度は反対車線側から河川敷に入った。今度は幸い後続車もいなかったので、ハザードを付けて停車し、写真を撮った。でも、いくら車通りが少ないとはいえ、ときどき通り過ぎていく車が自分の車を避けていくのを見てやはりだんだんいたたまれなくなり、撮影もそこそこに車に戻った。一度離れ、再度まわり道をして元々通った方の車線に戻り、どきどきしながら車を停め、写真を撮った。
ここまで人に迷惑をかけないようにしてしまう呪いの強さを思い知りながらも、今回は人の進路を塞いでしまう申し訳無さより、自分の写真を撮りたいという気持ちを取ることができた。少し前進。
イベントの30分前くらいに会場に着いたら、ほとんど人がいなかったので素知らぬ顔で通り過ぎ、どうしようと思った。近くに食堂があることを思い出し、駆け込む。おばあちゃん二人がやっているお店で、注文した角煮と小めしを慌ててかきこんでいたら「お腹が空いてたのねえ」と言われて、違うんです早く食べないとイベントに間に合わないんですと思いながら、でも喋っている暇はなかったので無心で食べ進めた。角煮はものすごく美味しかった。食事中、隣りに座っていた年上の男性がずっと話しかけてきて気が散った。
トークイベントは、参加者から生き延びるための言葉を集めてラジオ形式で紹介するという趣旨だったが、その内容があまりに良かったらしく当日急遽冊子にしたという。それを参加者全員に配ってくれた。それを読みながら、少なくともここにいるみんなは生き延びるために日々健闘している人たちだとなんだか親近感が湧いた。個人的には、生き延びるために支えにしているものは言葉というよりは記憶に近いので、提出するときにはなんとなくしっくりこなかった。でも、参加している人たちの言葉を読んで、生き延びるためには言葉も必要だと再確認した。イベント終了後、知った顔が何人もいたことに気づき、うれしかった。”生存は抵抗”という言葉も出ていたが、生き延びることがあらゆることへの抵抗にもなる。絶望することも多いけど、それでも前を向く力と勇気をもらった気がする。
その後は友人と近くのバーのような喫茶店のような店で話し込んで解散した。帰りの車中で、友人が教えてくれた宇多丸の『食堂かたつむり』の映画評を聞く。あまりにもな酷評で、時折声を出して笑いながら家路についた。