4月11日(木)曇りときどき雨|世の中ととことん噛み合わない、でも人と関わるのを諦めない

今日はとことん世の中と噛み合わない日だった。

始まりは職業訓練の対面指導で、それまで和やかな雰囲気だったのに私が発言をするとなんとなく画面の空気が止まって時空が歪んだかと思うほどだった。昼ごはんに食べたスパイスカレーのせいか、頬がずっと紅潮していた。

気を取り直してトークイベントに参加するために久留米に向かい、前回ばたばたになった食堂を再訪したけど、営業時間は過ぎているはずなのに表には「準備中」の札が出ていて、恐る恐る引き戸を引くと目があったおばちゃんに「なにー?」と言われる。なにー、て。いらっしゃいませじゃないんや。その後入ってくるお客さんには「こんばんはー」と声をかけていた。イベントまでは30分以上あったし、今回は張り切ってカツ丼を頼んでみた。「油ばあっためるけんちょっと待ってくださーい」「はーい」とどこに向けて放ったかわからない言葉に自分で返事をするおばちゃん。終わったと思った。案の定でっかい鍋に入った油が温まるのに15分くらいかかり、これはもう間に合わないなと覚悟を決めた。30分ほどかかって出てきたカツ丼は、茄子やかぼちゃの煮物が乗った独特なスタイルだったけど、美味しかった。途中私の斜め向かいくらいに座った夫婦がいた。夫が水割りを頼む。おばちゃんが出す。夫は見向きもせず、当たり前のように妻が受け取る。どぎつい方言を話すおばちゃんたちに、妻がわざとかというくらいの方言で返す。それがすごく白々しく聞こえたけど、そうやって相手と同じ言語を話すことで輪に加わろうとしているのかもしれない。

ようやく食べ終え、15分ほど遅れて会場に到着。トークイベントの後半ではいま感じているもやもやをシェアするという趣旨の回で、就活のときの「説明会に参加したのに質問や発言をしないのは意欲がないとみなされる」という刷り込みが強く、なにか発言をしなければと数人シェアがあったあとで思い切って手を上げた。会場の一番うしろの席に座っていたので、マイクがこちらまで届かない。このままで話します、と伝えてみるが、なんかすごく変な空気になって、壊れたテープレコーダーのように「このままで大丈夫です」だけを吐き出した。そして、いまの国とか政治があまりにも暴走していて、それを止めようとデモとか署名運動とかをしてもそれを平気で突っぱねられたりして、もうどうしたらいいのかわからないという話をしたけど、なんだか要領を得ない話になったのでこの話を受けてのスピーカーの方たちの話も、「行政とかの立場の人たちって話している言語が違いますよね」「みんなで議員になろう」という方向になった。あまりにもずれた発言をしてしまったと、帰りの車の中で一人反省が止まらなかった。もう少しうまく話せたのではないか、やっぱりその場で言葉を選ぶのは難しい。角田光代さんが「話すのはいやだ。全部文章にさせてほしい」と言っていたのがよく分かる。何度も反芻して、私は国とか政治にもやもやしているんじゃなくて、それに対してほとんど何もできていない自分にもやもやしているということを伝えられればよかったと思った。そうすれば受けた側ももう少し具体的な話に広げられたかもしれない。現に、私の周りは行動を起こしている人ばかりなのに、ほとんど何もできない自分に嫌気が差しているのは事実だ。自分の生活でいっぱいいっぱいだから、というのを盾にして。でも、そこでスピーカーのうちの一人のMさんが「自分の船に穴が空いているのに、他の人が溺れているのを助けることはできないから、まずは自分の船を修理するのが先ですよね」というような話をしていて、すこし気持ちが楽になった。穴が空いている船でもできることはたくさんあるから、自分の手の届く範囲で地道にやっていくしかない。

トークイベント自体は懐かしい顔にも会えたりして、楽しかった。そこにいる人たちが同じ気持ちでいるのだと思うとすごく安心して、これがよく言われている”連帯”なのかもなと思った。

挨拶もそこそこに会場を後にし、日付が変わる前くらいに家に着いた。最近結構自分的にいい調子だったから、やっぱり頭に乗るなということでこういうずれが発生したのかなといろいろ考えていたら、急に電話がかかってきた。画面を見ると福井にいる心の友からだった。今日あった出来事などあれこれ話して、ただひたすら笑っていたらあんなに沈んでいた気持ちがいつの間にか愉快になっていた。最近の創作活動の話もしていたら、そのボツ案の中から「これをこうしたらいいんじゃない」と拾い上げてくれたものがあって、おかげで次のzineの表紙まで決まった。そのzineを早く作りたくていまうずうずしている。やはり、一人で閉じこもっていても新しいものは生まれないし、いつまでも同じ視点からかたちを眺めているだけになってしまう。少し離れたところにいる人に話しかけたら、全く違う角度で見えているかもしれなくて、たくさんの人と関わるということはその視点がたくさん増えるということだ。自分では欠点だと思っていることが誰かにとっては長所になるように。いまは水星逆行期間だし、噛み合わないこともそりゃあるよな、と受け入れて寝る。

@kusundatofu
いろんなところではみ出しながら生きています。郷土玩具、ラジオ、無駄なものが好き。