朝起きると8時半だった。早く起きることが習慣付いてきているようだ。携帯を見ると、職業訓練校からメールが届いており、無事書類は到着していましたとのお知らせだった。そっと胸を撫で下ろす。リビングのテーブルの上にメモがあり、近づいてみると父からで、「お食べください」と書かれている横にコーヒーホイップのパンが置いてあった。だいぶうれしい。
明後日は職業訓練の面接ということもあり、対策をしようと近くのスタバに行く。いま期間限定で出されているスタバの袋が日本でも二社くらいしかできない印刷技術が使われているらしいとの噂もあり、どうしても手に入れておきたいというのもあった。いざスタバに行ったものの、店内でコーヒーを飲むのに持ち帰り用の袋をもらうにはどうしたらいいのだと、レジの前で考え込んでしまった。その間に、カートを押した年配の女性が目の前を横切り慣れた様子で注文を済ませ、別の女性に「並んでありますか」と問いかけられたが、結局分からないままひとまずレジに立った。店員さんに「あの、店内で飲んでいくんですけど、持ち帰り用の袋だけ買うことはできますか」と尋ねてみると、「え? あー、そういう販売とかはできないのでこのままお渡ししますね」と戸惑われながらも紙袋を手に入れることができた。あまりそういう人はいないのか、「あちらでお待ち下さい」のアナウンスはなく、微笑まれただけでレジを送り出された。なんとなくもぞもぞとした気分になり、ランプの前でカウンターからは目を背けていたら、数秒のうちに頼んだ飲み物が出てきた。久しぶりに飲むスターバックスラテは、牛乳の甘さがしっかりしていた。窓際の席で通行人を眺めながら面接の想定質問集を作った。
「もし不合格だった場合どうしますか」という質問が飛ぶこともあるらしい。「諦めて就職先を探します」と答えると、この人は職業訓練に行かなくても就職できると思われて落とされそうだし、「諦められないので再受験します」と答えても「じゃあ次で受からせればいいか」と思われそうで、かと言って「落ちることなんて考えていません」と答えても考えがないとのことで落とされそうだ。どう答えるのが正解なのだ。こういう人を値踏みするような行為はあまり好きではないが、でもどこかに所属したいと思うなら避けられない問題だ。社会との折り合いをつけるためにもやるしかない。ただ、ちょうど今日妹の夫が妹に「頑張れる子を演じたらダメだからね」との格言を授けていた。演じたらだめなんだよなあ。以前勤めていた求人広告代理店で、チームリーダーに「あなたは本当はもっとはじけられるのに、それを抑えてうまく馴染んでいるよね」というようなことを言われたことがある。その昔にも、スピ系の人に「あなたは檻の中にずっといて、そこから出たがっている。でも、出る方法は知っているはずですよ」との言葉もあった。型を破るには型を知らないといけないけど、型を知りすぎると今後は型以外のものになることを忘れてしまう。でも、お金を得るには型にはまらないといけないときもある。ある程度はこの社会に馴染むことも必要かもしれない。