人間には、心身を動かすための炉みたいなものがあると思う。
ここ数十年、僕の炉には静かに燠のようなものだけがある。
時折、どこからか吹いた風で少し赤く炎を上げるのだけど、如何せん燃えさしでは長く続くこともなく、すいと灰色の何かを吐いてまた静かで薄暗い灯に戻ってしまう。
世の中の大人たちは、みんな炉に自分で息を吹き込んで、自分で薪をついで、暖を取れているのだろうか。
暗い部屋のベッドの上で、締め付けるような頭痛と、体の芯から来る寒気を感じながら毛布にくるまり、汗だくでうずくまっている。
腹が減っているわけでもないのに、ドロドロに溶けた蜜蝋のかわりと、火傷するような出汁を流しこんで。
これは飢餓感なのだ、と言い聞かせながら必要のないカロリーを注ぎ続けるしかない。