Ⅱ.努々お忘れなく

夏目
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7月中旬頃まで勤めていた会社の取引先にお伺いする夢を見た。

代表の方とお会いできる機会は少なかったが、事務所に常駐している方々との関係が密な取引先だった。

夢の中でのその取引先は、幾許か事務所が広くなり、また心なしか従業員の数が増え、何より以前から大人しい印象を抱いていた受付の女性が、明るく活発に周囲と言葉を交わしていたのに驚かされた。

事務所の規模が大きくなったり、また人員が増加したりと言った環境の変化が、彼女に変化を齎したのであれば、大変喜ばしいことだと思えた。

しかしこれら全ては私の断片的な記憶を基に構築された、パラレルワールドでのお話だったようで、現世で目を覚ました私は、事の顛末を理解するまでに少々の時間を費やした。

そして正午前を指し示す卓上の目覚まし時計に、親愛なる日曜日の余命を宣告され、緩やかに現実に引き戻された次第である。

生憎、10月から始めた仕事は業種こそ違えど、お客様先に訪問することの多い職であることに変わりはないため、久方ぶりに連絡を取ってみるのも悪くないかも知れない。

先方の近況から何かしらご案内できるものや情報提供できるものが見えてくるかも知れない。

そんな夢を想い描く12月初めの夜。