20241115

kyri
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公開:2024/11/15

面接試験が集団面接だと聞かされてもう倒れそうになっている。集団面接……と考えてみてそういえばうちの会社の就活の最終面接も集団面接だったことを思い出した。もはや太古の記憶である。またあんなことをやらされるのか……しかもきっと年下の人たちと一緒に……もうだめだ……逃げたい……でもそうはいかない……という気持ちでずっとぐるぐると頭は目まぐるしく、憂鬱だし泣きそう。上司は優しいのでまた模擬面接しような! と言ってくれてもう日程もセットしてくれたのだけど、模擬面接ですらうまく話せる自信がない。だけど、私って今じゃこんなに自信のない人間だったんだなと、ちょっと不思議な気持ちでもいる。学生時代までの私はなぜだか根拠のない自信に満ち溢れており、就活もその妙な自信のおかげでなぜかうまくいった。社会に出て、荒波に揉まれて、体調を崩してその自信は少しずつすり減って、だけどやっと、等身大の自分になれたような気がする。自信の鎧は私をすごくすごく守ってくれたけれどちょっと重過ぎた。もちろん自信があったおかげでいろんなことができたと思う。留学にも飛んでいけたし、社会人1年目の怒涛のような日々も生き抜けたし、その傍らでずっと小説を書いていられた。多分、若かったからだなあ。何にしても全部が「若かった」で片付いてしまう。でもそれって、恥ずかしい、とまではいかないけど、あんまり褒められたことではないね。走るのをやめてしまっても、せめて、歩き続けていなくてはいけないよ。ということで、今となっては風前の灯くらいに小さくなった勇気を振り絞って、月末に本社に行ってきます。

『<弱さ>から読み解く韓国現代文学』を買おうと思って本屋に行ったら山内マリコの新刊『逃亡するガール』がサイン会整理券つきで平積みされていて、ちょろい私は一瞬で心変わりして『逃亡するガール』をレジに持っていく。『<弱さ>から読み解く韓国現代文学』も買っても良かったのだけど、ぱらぱらめくってみるとこの本が取り上げている作品で自分の読んでいるものが『82年生まれ、キム・ジヨン』と『ディディの傘』くらいしかなく、読んでない本の解説を読んだところでなあ……とちょっと躊躇ってしまったのだった。さっき地元の図書館の蔵書検索をしてみたらこの本が取り上げている作品はなんとなく、大体ありそうだった。地元の図書館はハン・ガンがノーベル文学賞を受賞したことで今韓国文学全般がなんとなく品薄になっており、喜ばしいことではあるもののそこから隙間を縫うように残った本を読んでいくしかない。

山内マリコは一時期追いかけるのをやめたけれど昔はよく読んでいて、中でも『あたしたちよくやってる』が大好き。ここに収録されている「リバーズ・エッジ2018』がいちばん好きで(これは『リバーズ・エッジ』の副読本『Edge of River's Edge』に収録されていたものが『あたしたちよくやってる』に再録されている)『Edge of River's Edge』を売ってしまってからも山内マリコのあの短編だけは好きだったな〜…と思っていたところ、この『あたしたちよくやってる』に再録されているのを知って購入を決意したのだった。購入してすぐ読んで、昂る気持ちのままにtwitterに感想をツイートしたらマリコ氏本人に見つかってしまってリプライをもらったことがいい思い出だ。9月の柚木麻子氏に続いてマリコ氏のサイン会にも行けるのはなんだか縁を感じる。

 その翌週、山田くんの秘密の宝物は、腐敗が進む前にあっさり見つかり、撤去されてしまった。あたしと山田くんのあとをつけてきた田島カンナが写真を撮って、ツイッターに上げてしまったのだ。すぐに拡散されて大騒ぎになって、警察が来て、死体はブルーシートで目隠しされ、運ばれていった。遠くから見ていた山田くんは、「残念だな」と言ったきり、なにも喋らなくなってしまった。山田くんの宝物は、野次馬や、マスコミのカメラに晒され、穢されてしまった。可哀想な山田くん。

 一連の騒ぎも、やっぱり現実感がなかった。テレビのニュースみたいだって思った。北朝鮮からミサイルが飛んできてるはずなのに、全然現実感がないのと同じくらい。ていうか、現実感ってなに? 現実ってどこにあるの? さわれんの?

山内マリコ「リバーズ・エッジ2018」(『あたしたちよくやってる』p.102)

『リバーズ・エッジ』はもちろん岡崎京子の原作が好きだけど、このマリコ氏の2018版を読むと映画版キャストの二階堂ふみと吉沢亮で再生されてしまう。あの映画はいきなり吉沢亮の全裸から始まる映画でなかなか衝撃的だった。そしてこの映画を観たのも私にものすごい吉沢亮ファンの友達がいることと無関係ではなく、御多分に洩れず彼女の影響で観に行ったのだった。もちろん『リバーズ・エッジ』が好きだったのもあるけど。製作陣が、ものすごく『リバーズ・エッジ』のことを好きなんだろうなと肌にビリビリ伝わってくる映画だった。でも、好きなのはわかったけど……みたいな映画でもあった。映画の合間に登場人物へのインタビュー映像が挿入されるんだけど、あれ正直いらなかったな……

@kyri
週末日記