今日は朝から従妹のお店に行って髪を切って染めて(インナーカラーも変わらずピンクブラウンを入れている)そのまま図書館と映画館に向かった。今日の映画は『oasis live at knebworth』オアシスの伝説のコンサートらしい1996年のネブワースを映画化したものらしい。私はオアシスは別にそこまで詳しくないけれどApple musicが作っているプレイリスト「はじめての」シリーズでオアシスを聴いていて、あとは自分の推しカプもオアシスが好きという謎設定をつけているので、これは! と思い観に行った。フィルムコンサートの類は去年の年末に観に行ったビリー・ジョエル以来だったかも。
オアシスを観るまでの時間は辻村深月『太陽の坐る場所』を読んでいた。これは先週の古本市で100円で買った本。先週読んだ柚木麻子『ナイルパーチの女子会』となんだか繋がっていそうな気がして。果たして、繋がっていたかどうかは分からなかったけれどさすが辻村深月で面白かった。ちゃんと謎かけも入っていて、まさかそこを騙してくるとは思わなかったところで騙された。でもあとから考えてみたら答えはちゃんと初めからそこにあって、自分が勝手に騙されていただけなのだった。そういうところも小説がうまいな……と思う。が、小説がうまい以前になぜこんなに人間の気持ちをわかっているのか不思議になる。高校時代の、自意識・プライドと友達・恋人の間で揺れ動く見事な天秤だった。『ナイルパーチの女子会』と繋がっているんじゃないかと思ったけれど、読み終えてみて、登場人物はみんな自分の物語の主人公なのだという当たり前のことに気づくとき、これはどっちかといえば『終点のあの子』に近い小説かも知れないなと思った。柚木麻子で並べるならという話ですけど。
辻村深月はラッピングがうまい作家だなと思う。汚い感情、できればしまっておきたい感情を存分に言語化して書き出しはするけれど、それは剥き出しではなくて、ちゃんと編集されて、(それはくどうれいんが『日記の練習』で語っていた「うまい文章は書きすぎないようにもできる」という言葉に響き合うかも知れない)ラッピングされて差し出されてくる。だから(先週読んだばかりだからどうしても記憶が新しいので比べてしまうけど)『ナイルパーチの女子会』『終点のあの子』みたいに熱湯を流し込まれるような、氷を背中に入れられるような、ものすごく苦いお茶を飲まされるような、そんなつらさは不思議と感じない。優しい人なんだろうなと思う。こう書くと柚木麻子が優しくないみたいな感じになっちゃうな。違います。著作、全然読んでないけど、読んでないなりに『スロウハイツの神様』は大好きで、今でも折に触れて思い出す。去年のブックサンタでも迷わず『スロウハイツの神様』を買った。また読み返したいな。
で、『oasis live at knebworth』。
めちゃくちゃ良かった。知らない曲ばっかりだったらどうしようと思っていたけど大体知ってる曲で安心した。Apple musicの「はじめての」シリーズも捨てたもんじゃない。大好きな曲「Don't look back in anger」をノエルが歌い出したときは泣いてしまった。
全部の曲が、それが初めて聴く曲であれ、全部がオアシスの曲に聴こえた。これってすごいことだと思う。自分たちは他の何でもないオアシスなのだと、ただ一つのバンド、オアシスなのだと、そういう矜持が感じられた。全部がオアシスの曲に聴こえるというのは、バンドがオアシスの音楽とはどんなものか、聴衆が自分たちにどんな音楽が求めているかを完全に理解しているということで、それを分かった上で、全部をオアシスの曲として作ってくるノエル・ギャラガー、まじで頭がいい。そしてリアム・ギャラガー、そんな変な姿勢でよく声が出るなと思ってしまうのだけど(彼がその歌い方から「校長先生」と呼ばれているということを友達から聞いたときは笑ってしまった)そしてこれは私が単に若いときの動くリアムを見たことがなかったからなのだけど、うっかり、すてきだ……! と思ってしまった。長くて重ための髪型、メガネ、袖が長めの白シャツ、神経質そうな目、私が感じたのは紛れもなく「萌え」だった。まさか自分がリアム・ギャラガーにそんな感情を抱く日がくるとは思ってもみなかった。でも、萌えじゃなくて、彼に本気で恋した人もいっぱいいただろうなと思った。今までなんとなく聴いてただけだったオアシスの解像度がいきなり爆上がりした。もうリアムとノエルがしょっちゅう兄弟喧嘩してたこと、結局ノエルが脱退したこと、それすら愛しい。早速彼らを消費しはじめている自分がちょっと嫌になる。でもこれからしばらくオアシスばっかり聴くだろうな。
それにしてもスクリーンを埋め尽くすほどの人、人、人なライブで圧倒されてしまった。こんなに人がいっぱいいる場、しかもみんなテンションぶち上がりで飛び跳ねたり踊ったりしている場、私は、ちょっと無理だな……楽しそうだなとは思うけど、多分こういう場に死ぬまで縁がないような気がする。でも、こういう尻込み人間にも映画という形で届けてくれる世界が優しい。ありがたい。映画館の音響で聴くオアシスは良かった〜。
と、こういう感想を家族に伝えたら家族も観たい! と言い出したので、まさかの明日も観に行きます。明日は『ナミビアの砂漠』かなと思っていたのだけど、まあよしです。何度でも観たい素晴らしいライブでした。