20240308

kyri
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昨日と今日、県立高校入試だった。朝の電車が受験生たちと一緒だったのだけど、駅員さんが切符を切りながらひとりひとりに「頑張って行ってきてね」と声をかけていてとても良かった。私の地元は田舎が過ぎるのでいまだに有人改札なのだけど(ぎりぎりICカードをピッできる機械はある)毎朝駅員さんから挨拶をされたりこうして受験生たちに声をかけたりしているのを見れたりするのは有人改札もたまには、というか、いつも捨てたものではないなと思う。今年の受験生たちに幸が多いことをひっそりと願う。

今日は時間休の残りを消化するために14時半で退社して図書館へ行った。私は富山市内にある会社で働いているのだが、住んでいるところは電車で25分ほど揺られたところにある郊外の市で、富山市の図書館は富山市民じゃないと図書カードを作れないものだと長い間思い込んでいたのだけど改めて調べてみるとどこの人でもウェルカムだった……この思い込みはどこから来ていたのだろう。そして、これも長い間、私の読みたい本は図書館にはないものだと思い込んでいたのだけど、先日なんとなしに蔵書検索してみれば私の読みたい本は大体あって、すみませんと思ったのでした。と言うことで、お金も場所も有限ということもあり、これからは積極的に図書館で本を借りていこうと思います。ただ、2週間で返さなきゃならないのが恐ろしいんだよな〜絶対読み切れる自信がない。延長の常習になりそう。

2時間弱滞在して植本一子『愛は時間がかかる』を読んだ。一子さんのトラウマ治療の記録のエッセイ。カウンセリングってそういうことをやるんだな〜と新しいことを教わった。一子さんは母親との関係、パートナーとの関係の改善を目指してカウンセリング治療に臨んでいた。そして、その甲斐あって一子さんがどんどん楽になっていくのを追いかけることができて良かった。「不幸なときの方が面白かった」というのはこの世でいちばん下品な言葉、雨宮さんの言葉を思い出す。

パートナーが知らない女友達と出かけてしまうのがいやだと一子さんは書いていた。それを読んで、まあ確かにねと思ったものの、ここでふと自分の学生時代を思い出した。その記憶の中にいる私は恋人がいるにも関わらず平気で男友達と連日遊び歩いていた。それがもとで恋人にブチ切れられるのもしばしばだったのだが、あのときの私は何が悪いのか多分本気でわかっていなかった。だって恋愛として好きじゃないんだしという理屈である。その恋人とは私の留学がきっかけで別れた。留学に行くことになったから別れたのではなく、一応留学中も付き合っている体を保ち、帰国してから私が彼を振った。今思えばひどい話だ。今ならそうとわかるのだけど、留学して遠くオーストリアの地にひとりでいた私は将来のことを考えて、帰国してそのまま彼と付き合い続けてもしかしたら結婚するのかもしれないと思うと猛烈に、無性に、めちゃくちゃいやだったのだ。できればこのままずっとひとりでいたいとそのとき強く思った。だからそうした。すると彼はやっぱり傷ついて(当たり前である)静かに激怒して「留学してつまんない女になったね、留学する前の方が良かった」その他諸々私に言い放つ。そして私も激怒する。話し合いの余地もなく別れ、私はずっと長い間彼を憎むことになった。心から憎んでいたので友達にも彼のことを話さなかったし、長い間思い出すこともなかった。それがここ数年でようやく、そりゃ彼だって悲しかったはずじゃんと思えるようになった。あのくそ野郎もう絶対許さん一生許さんと思っていたけれど、あのときどっちがクズだったかといえば多分私の方である。自分の夢を優先させて彼との日々よりも留学を選び、身勝手に飛び立ってしまったかと思えば帰ってきてもうやめるだなんて改めて思えばひどい話だ。今なら彼に同情できるし、かわいそうだと思うし、そして私が悪かったと思う。私の幼いところも悪いところも醜いところも全て見尽くして、それでも受け入れてくれた人だったんだなあと今思えばそう。でもあの別れの場で言われたことは今でも私の脳裏に焼き付いて今でも新鮮にむかつける。もう1ミリも愛してない。思い出すこともない。全ては過ぎたこと。もう二度と会うこともないだろう。でも、許してないけど、許している。許してほしいとも今更思わないよ。

そんなことを考えていた。いや〜、10年以上前の話だよ。一子さんのトラウマ治療に触発されて私もいろんなことを思い出してしまった。このことを書き記すのも初めてだ。知らないうちに私も自分のトラウマじみたものと向き合ってたのかもしれない。

『愛は時間がかかる』を読み切って、同じく一子さんの『台風一過』と能町みね子さんの『結婚の奴』を借りた。別に結婚を急いでいるわけでもなければ望んでいるわけでもないしそもそも相手がいないしなんだけど、しずインで一方的に日記を拝読している人が先日紹介されていてちょっと興味を持ったのだった。図書館にあってくれて良かった。しかし明日は『アーガイル』を観に行くらしい。私の原稿がどんどん遠ざかっていく。せめて気分だけでもそっちに向かわせようとイメソンプレイリストを聴いているけれどやっぱり自信無くなってきた。魅力的なエッセイの数々が右から左から私を呼んでいる。嗚呼。

@kyri
日々と二次創作の間で