20240824

kyri
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公開:2024/8/25

濱口竜介監督の舞台挨拶へ行ってきた。濱口監督が話すところってそういえば見たことなかった。アカデミー賞のスピーチも見逃したし……。富山県に来たのは初めてだそう。確かに用事がないと来ない県ではある。以下、質疑応答で覚えてるところだけメモ。結構コア? な濱口ファンがたくさんいて、その人たちのおかげで面白い話がたくさん聞けたのでありがとうございますという感じだった。でも一夜明けただけで既に忘れている部分もあったりして、私、こんなに覚えの悪い人間だったか……?! と愕然としてしまう。老化です。質問内容もその回答もうろ覚えなところがたくさんあるけど、ご容赦ください。


・「演技する人」というものをテーマにずっと映画を撮っているが、これは日本映画において予算上の問題があり、劇中劇は場所を移動させることなく一箇所で撮り終えることができることから始めたのがきっかけだった。けれどそのうち「演技すること」を撮ること自体に興味が出てきて、こうして撮り続けている。映画においてリアリティという話をするとき、その中に穴があると簡単にそのリアリティは崩れてしまうが、劇中劇という形式を取るとそもそも劇中劇もまた虚構であるので、リアリティについて目ざとく言及されることも少ないというメリットもある。

「濱口監督の脚本はそう簡単に登場人物には共感させないぞという意識を感じるが、脚本を書くにあたって意識していることはあるか」

・共感させないぞと思って書いているかどうかはわからないが、物語においてキャラクターはどうしても駒になりがちで、その意味では物語を進めるためにこのキャラクターにこのような台詞を言わせる、というのではなく、あくまでその登場人物の行動原理を理解し、物語がどう動くかではなくその人はどう動くのかを考えて書いているところはあると思う。物語を進めるためにそのキャラクターを動かしてしまうとそのキャラクターから他者性が失われてしまうと思う。私のキャラクターに共感しにくいとしたら、その他者性から来ているのではないか。

「『ドライブ・マイ・カー』を観て、先日『悪は存在しない』を観たが、どちらもラストが何だったのか全くわからなかったんですが……」

・一つ言えるとしたら、ラストの意味がわからない映画というのはこの世にたくさん存在しているので、個人的にはそう言っていただけることはとても嬉しい。

「『ドライブ・マイ・カー』である映画監督がカメオ出演しているが、あれは何だったんでしょう」

・『ドライブ・マイ・カー』では岡田将生くんを連行していく警察官役に吉田大八監督を起用している。この警察官の出番は一瞬だが、その一瞬で誰が岡田くんを連れていくのに説得力を持たせられるかということを考えたとき、吉田監督が候補に上がった。顔が良かったというのもある。そしてたまたま吉田監督も岡田くんに演出をつけたことがあると知り、岡田くんとしても連行されるシーンを演じるにあたって演技の助けになるのではないかと思い、吉田監督に決めたという経緯がある。


他にも質疑応答あったはずだけどちゃんと覚えているのがこれくらいだった。勿体無い! 録音しておくべきだった(それが許可されていたのかは怪しいけれど……)19時上映で、終わる頃には21時で、舞台挨拶が終わったのは22時という遅い時間だったけど劇場は満席で、こんな田舎においても濱口監督は存在感のある人なのだなあということを実感したのだった。

それにしても『偶然と想像』私は初見だったのだけど、主に第3話で笑っている人が結構いて、えっこれ笑う映画か?! と驚いてしまった。この映画に限らず、お笑いなど明確に人を笑わせようとするのが目的のものじゃない作品において笑い声が起きるという状況にあんまり慣れないというか、ちょっと苦手……何がそう思わせるのかよくわからないが。これは笑っていい映画ですよとちゃんと提示されないと不安になるのかもしれない。ちゃんと提示される状況というのもよくわからないけど……。

舞台挨拶が終わったあと『他なる映画と』のサイン会があった。私は正直読み通せる気が全くしなかったけれどサインは欲しい! というミーハーを発揮し、いそいそと列に並ぶ。サインをいただいているときに濱口監督から「富山の方ですか?」と聞かれ、「あっはい出身は富山で……」と答えたところで、いや待てよ、私はかつて大阪に住んでいて『寝ても覚めても』に出てきた美術館(国立国際美術館)のめちゃくちゃ近所で働いていたじゃないか!! とひらめいて「『寝ても覚めても』は大阪で観まして、私中之島に勤めていたんです!」と言えて良かった。濱口さんもちょっと喜んでくれて良かった。そして手に入れた『他なる映画と』一夜明けてもまだ読める自信がないけれど、私は映画や読書についてはまじでただのミーハーでしかないので、もっと映画を面白く観るために頑張って読んでみよう……とは思うのだった。応援してください。

@kyri
週末日記