20241208

kyri
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公開:2024/12/8

ものすごく寒い日だった。朝からみぞれ混じりの雨が降って、時々すごい音の雷が鳴った。いよいよ冬だ。それにしても夏と冬とで雷の音が全然違うのでちょっと面白いなと思う。子供の頃からひどい雷恐怖症で大人になってからも雷が鳴り出すと音が聞こえない部屋まで避難していたりしていたのだけど最近ようやく避難まではしなくて済むようになってきた。こうやって少しずつ子供だった自分を忘れていくのだ。

先月大阪に行ったときに中之島ダイビルに入っている五感というお菓子屋さんでシュトレンを買っており、昨日くらいから食べ始めたのだけどこれがすごく美味しくて感動してしまった。しっとりしていていろんなフルーツが贅沢に入ってる。大阪に住んでいるときから存在は認識していたものの、五感でお菓子を買ったのってそういえば初めてだったかも知れない。一度は北浜のカフェでケーキとか食べてみたかったな。でもシュトレンもこんなに美味しいとは思わなかった。去年は地元のクリスマスマーケットでどこのお店かもよく知らないまま買ったシュトレンを食べたけれどこっちは水気が全然なく、すごく乾燥していて固かった。別に美味しくないわけじゃなかったけど、今年の五感のシュトレンを食べたらやっぱりこっちって思っちゃう。おすすめです。


試験も終わったし、特に予定もないし、今日は家にこもってのんびりする! 積読を崩す! と思って実際そうしたのだけど、一日中家にいると夜になる頃にはなんだか気分がふさいでしまった。なんといっても昨日オアシスのチケット販売を忘れていたのが今でも響いていて、何かにつけて思い出しては涙目になってしまうのだった。こういう、いらんことを考えてしまわないためにも特に具合が悪いとかでなければとりあえず外出した方がいいのかも。することは出先で見つける。


恋の渦中にいる人間は、自己を支える柱が、得体の知れないバグによってぐらぐら揺らされていることを頭では理解している。しかしその狂気の中に自分だけが取り残されることに耐えられず、その相手も一緒に狂ってくれることを願ってしまう。その狂気自体にはとても多幸感があって、しばしば人の判断能力を失わせる。そういう時に思わず不安から出てしまう問いが「わたしはあなたにとって何か」という言葉なのだろう。これを訊かれた相手は、本質的には「あなたはあなたでしかない」と返すことしかできないはずなのだが、何かの「形式」を欲している相手にはその言葉は届かない。そうして全てが終わった後に、その夢が単なる揮発性の脳内物質に過ぎなかったことに気づくのだ。

百瀬文『なめらかな人』p.17

ああ、くれてやるもなにも元から私のものではなかったのに。彼氏彼女と呼び合う関係に、いったい何の意味があっただろう。誰と誰の心が深くつながっているかに呼び名なんて関係ない、あるのはいつも、抗いがたい引力と、視線を交わしたあとのさりげない微笑みだけ。

綿矢りさ『かわいそうだね?』文春文庫 p.149.

なんだか恋についての印象的な文章が続いたので引用してみる。綿矢りさはピンとくるものこないものの差が激しすぎて私にとってはかなりガチャ度が高い作家なのだけど『かわいそうだね?』はとても面白かった。同時収録の「亜美ちゃんは美人」もよかった。綿矢りさはガチャ度は高いけど上記に引用したようにときどき本当に、心からハッとする文章を書く人で(『蹴りたい背中』の「さびしさは鳴る。」もそうだった)その瞬発力のようなものにいつも惚れ惚れし、そして嫉妬するのだった。金原ひとみが綿矢りさについて「小説の神様に愛された人」みたいなことを言ってたような気がするのだけどそれもなんとなくわかるような気がする。

小説を書きたい気持ちは今日もあるものの、前述の通り一日中家にいて気分がふさいでしまうと「どうせ私にはだめなんだ……」という結論にしかならなくて話にならないので一旦忘れることにする。でも、やっぱり人と会うわけでもない、恋をするわけでもない、家と会社の往復(+休日の図書館と映画館)くらいで人生が満たされている人間にはそもそも小説が入り込む余地なんてないのかも知れない。一旦忘れることにするとか書いておいて全然忘れてないじゃん。だめです。もう今日はこの話終わりです。


またみぞれが降ってきた。観念して部屋の暖房を入れました(むしろ今までつけていなかったのかという話)暖かくしておやすみなさい。

@kyri
週末日記