昨日、シネマート心斎橋が閉館した。
思えば、私が大阪に住んで、そして離れるまでの時間をずっとともに過ごしてくれたような映画館だった。初めてここに映画を観に行ったのは2015年、『ザ・トライブ』というウクライナ映画を観たくて足を運んだ。映画は今でも忘れられない。今でもラストシーンのことを思い出す。
アメリカ村に行くのもBIG STEPの中に入るのもとても久しぶりだった。BIG STEPはゴスパンク服を見に行った以来の再訪だったと思う。今ではそのお店も無くなってしまっているけれど。それはちょうど仕事が神戸から大阪へ異動になったときで、それまでよく通っていたシネリーブル神戸や元町映画館からなんとなく足が遠のいて、その代わりに、シネマート心斎橋に通い始めた。相変わらず若い街だな、と思っていたアメリカ村もまた好きになった。アメリカ村の周りのお店もまた開拓するようになった。そしてシネマート心斎橋は韓国を始めとするアジア映画を得意とする映画館だった。私はここに来るまで韓国映画に全く馴染みがなくて、正直、そこまで興味もなかった。だけどある読書会で同じ席に座ったシネマート心斎橋支配人のヨーコさんがそのとき熱烈に勧めてくれた『タクシー運転手』をきっかけに、私は韓国映画のよさに目覚めて、それからますますシネマートに通うようになった。そして、支配人のヨーコさんともこれがきっかけで仲良くさせていただけるようになり、ここに来ればヨーコさんに会えるのだと、ますます行くのが楽しみになった。
シネマート心斎橋で観た映画の中で印象に残っている映画、その1。
とにかくYUIの「fight」が流れ出してからの展開がいい。このfightを聴きたくて3回観に行った。DVDも買った。愛しかない映画だった。ルーの声が、本当に想像したとおりのルーの声ですごくびっくりしたのを覚えている。
その2。
韓国の俳優さんにはまだそこまで詳しくないけれど、この映画は、知らないなりでもわかるオールスター映画だった。これも2回観に行った。できれば蓋をしたいであろう歴史に真っ向から立ち向かおうとする姿勢は韓国映画ならではだなと思う。すごく揺さぶられて、2回観に行って2回泣いた。
その3。
『1987、ある闘いの真実』で初めて観て、その美貌に一目惚れしてしまったカン・ドンウォンさんについてtwitterで話したら学生時代の演劇部の後輩の女の子から「カン・ドンウォンだったらこの映画観てください!」と勧められたのをきっかけに観に行った映画。とにかくカンさんがこの世のものとは思えないくらい美しくてしばらくカンさんのことしか考えられなくなった。ヨーコさんともこの映画の話で盛り上がったことを思い出す。カンさん、本当に漫画の世界から出てきたような存在感をしてる。韓国版西部劇、といった感じの映画だけど何より「漫画の実写化」という言葉が一番しっくり来るような映画だった。これも確かDVDを買った。そしてここから機種変するまで私のスマホの待ち受けがカンさんになった。
他にも韓国映画を観るきっかけになった『タクシー運転手』、満席で立ち見の人までいた完全版『お嬢さん』、これもまた満席だった『ゴッズ・オウン・カントリー』、確か誕生日に観に行った『コーダ あいのうた』、色々挙げていけばきりがない。シネマート心斎橋は、外れがなくて、痒いところに手が届くような、そして、とても居心地がいい映画館だった。それはヨーコさんがいてくれたからもっと素敵な場所になった。シネマートとヨーコさんに出会えたことは私の人生でも大きな財産だった。
思えば私が韓国映画だけじゃなく文学にも触れるようになったのは、確実に、シネマート心斎橋のおかげだっただろう。シネマートのおかげで、私はハン・ガンにも出会えたのだ。
もうシネマートは無くなってしまうから、ヨーコさんとも会えなくなるのかなと寂しくなっていたけれど、シネマートはkino cinemaになって再出発して、ヨーコさんもそこに残るのだと教えてもらって、本当に良かったと思った。「これ以上大阪から映画館をなくしたくない」そのヨーコさんの願いが聞き届けられたんだと思って、嬉しかった。kino cinemaになったあとのシネマートにいつ私が訪れることができるかまだわからないけど、またいつか、必ず遊びに行きたいと思う。これからのkino cinemaがどんな映画をかけてくれるのかわからないけど、できれば、また韓国映画をかけてほしいなと思う。シネマートらしさが少しでも残ってくれればいいなと思う。そしてまたヨーコさんと映画の話がしたい。
ずっと忘れないし、ずっと感謝をするよ。