誕生日の日記にたくさんのお祝い感想レターをありがとうございました。もうこんな歳になってしまって……とちょっと寝込みかけていたのだけど、あんまり中身がある日記にはならなかったけれど頑張ってソファから起き上がって書いてよかったと思います。年々誕生日が憂鬱になっていくけれど、だけどなんだかんだでSNSや日記では誕生日ですって発信してしまうし、そうしたらいろんな人がお祝いしてくれるし、ただ生きてるだけなのにお祝いしてもらえる日って誕生日くらいなので、そんな日が一年に一回必ずめぐってくるということはすごく幸福なことなのだと思います。ありがとうございました。今年も一年頑張ろうと思います。いつだって今がいちばん若いんです。
今日は図書館で勉強してから『違国日記』映画を観に行った。以下ネタバレしています。箇条書きでいこう。
・新垣結衣の槙生ってあんまりピンと来なかったんだけれど(声が違う気がするんだよなというのは今でも思う)ちょっとウェーブというか(悪く言えばボサボサ)の髪が原作とはまたちょっと違うはずなのにそこがいちばん槙生っぽかった。あと常になんとなく眉間に皺が寄ってる感じ。でも新垣結衣ももう35歳なんですよね……槙生じゃん……。
・槙生の部屋が漫画の5倍くらい散らかっててあっ私も生きてていいんだと思いました。(私の部屋もまた汚い)
・瀬戸康史の笠町くんもエッ瀬戸康史…? と思ってたんだけど見てみたら最初の一瞬から笠町くんでびっくりした。なんだろう。話し方? なんか、かっこよかった……(それは瀬戸康史のナチュラルなかっこよさでは?)あれだけの登場なの勿体無いから笠町くんと槙生ちゃんの二人がメインのスピンオフを観たい。
・槙生と朝がメインの映画だったので、どうしても周りの人たちのエピソードは省略されてしまっていたのだけど千世ちゃんのエピソードが入っていたのはよかった。パンフレットを読んでみたら千世ちゃんエピソードは入れてほしい旨ヤマシタトモコ氏からリクエストがあったそう。千世ちゃん、可愛かったな。クラスメイトズの中ではいちばん漫画からそのまま出てきたみたいな女の子だった。眉がすてき。そして教室を飛び出していった千世ちゃんを追いかけて傘を差し出してあげられる朝であることを嬉しく思った。犬の遠吠えの演出も良かった。
・朝のミニライブ、コーラスでちょっと入っただけの未森ちゃんの方が圧倒的に歌がうまくてそういうところもリアルで良かった。ああいう子ほど自分が手に入れたものに対して執着がないんだよな(わかりませんけど)
・実里が必要以上に悪者になっていなくて良かった。
映像化された時点ではこれはヤマシタトモコの作品というよりかは瀬田なつきの作品だと思うので、映画の中を流れる空気だったり質感だったりそういうものは変わっているしそれでいいと思う。これはこれ。全編を通して過激に瀬田なつきと解釈違い! みたいなことは起こらなかった。すごく『違国日記』が好きなんだろうなと、愛された作品なんだろうなと、だからこそ大事に作られたんだろうなということが一つひとつのシーンから伝わってきて、良かったと思う。親の死以外の大きな出来事が起こるわけでもないし、日々はゆっくり確実に流れていってその断片がシーンになって私の目に映る。だけどその日々の積み重ねこそが愛おしく、この手で守っていきたいんだと思わせる煌めきに満ちている。
私は実里か槙生かと言われたら絶対に、限りなく実里の方に近い性格をしていると思っていて、だから実里のことを一言にひどい親だと断罪することもできない。実里には実里の言い分があっただろうし、それを漫画でもずっと聞きたかったし、彼女には彼女の心のやり場があったことを分かりたかったし、彼女のことをもっともっと知りたかった。だけど彼女はどうしたって死んだ人だし、漫画でも映画でも、私が望む分の実里へのフォーカスはなされなかったけれど、でも彼女のことを、単にダメな親だよなと片付けてしまうのは勿体無いと思うくらい、彼女は彼女でとても人間らしい人だったと思うのだ。
そして私は槙生に対しても羨望とも妬みとも取れるような複雑な気持ちがあって、それは私が実里に似ていることも関わっていると思う。仲良くしなよ、というのとはまたちょっと違う、もっと、槙生に実里を許してもらいたかった、とも違う、実里も槙生に何らか作用したのだということを知りたかったのだと思う。だから漫画で槙生が実里について「私たちは互いの持ち物がお互いすごく羨ましくてすごく嫌いだったから」と言ったことには救われた思いがしたのだ。槙生にも実里に対して羨ましいと感じた何かがあったことを知れてよかったのだと思う。私の中にいた実里が少し浮かばれたような気がした。
私はずっと槙生になりたくてなれない実里なのだと思っていた。だけどある日中学時代の友達から「槙生ちゃんを見てあなたのことを思い出した」と言われたことがある。涙が滲むくらい、心底から嬉しかった。私は槙生になりたかった。別に小説家として成功してもないし家を買ってもないし衛星のような恋人がいるわけでもないし槙生とはやっぱり何も似てないけど、でもだからこそ、槙生になりたかったんだなあ。(そしてこうやって書いてみるとやっぱり槙生は色々持っている方の人間なのだ、ずるいよなあ!)
と、思っていたのだけど、映画を観て、私もはたから見たら槙生なのかも知れないな……となぜか思った。本当に似ているのかどうかは置いておいて、私の友達が槙生を見て、彼女を私だと思ってくれることにそこまで違和感を感じなかった。なんでだろうね。
最後に『違国日記』の漫画が完結した時に書いた槙生ちゃんへの激重エッセイを載せておきます。これも書いたときは友達からすごく褒めてもらったり、結構リアクションがあって嬉しかったな。