Claude Codeエンジニアリングで全編35万文字を書いた書籍が出るらしい

laiso
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公開:2025/11/18

Findyのイベントで「AIエージェント 人類と協働する機械」という新刊についての講演が行われていたので視聴した。

これは原稿となるMarkdownファイルへの直接的な人間の手修正は一切なしで、すべてAIエージェントとの対話・指示だけで完成させた実験的な書籍らしいとのことで、前々から注目していたタイトルだった。

平均的な技術書でコード込みで1章1〜2万文字だと思うので、長文ブログもだいたいそれくらいだから、ボリューム感を想像してほしい。電子書籍版はまだ出てないので未購入、気になる人は出版社ページをチェックしてみてください。 (追記)Kindle版が出ていたので購入した

本の最後に「この本の作り方」章が丸ごと載っている。つまり本書自体がAIエージェントを現実の仕事環境でどう活用できるか? という本書の主張通りに実践してできたという構造になっている。

Findyのイベント講演で広木さんが語っていた内容をまとめると、こんな感じだった。

まず過去の自分の講演書き起こしなどを素材に全体アウトラインを作成し、章単位・タスク単位で複数のエージェントに並行作業を割り振る。調査→事例研究→下書き→レビュー→修正をエージェントが自律的に回す。

普通の人はそんなに大量の発信実績を持っていないと思うので、これは著者の役得だけど、要は「口述筆記でビジネス書を書くときの編集者ポジション」をAIエージェントが担っている、という説明をされていた。

専用の支援ツール群もバイブコーディングでその場で作っていて、レビュー用Webアプリ(原稿ビュワー:peaks.cc の先行配信がそういうシステムになっていて参加したことがある)では指定箇所にコメントを入れると自動でGitHub Issues化したり、JSONでクリップボードコピーできたりして、それをAIエージェントが拾って修正を提案してくれる。実質「紙の赤入れ→著者が直す」を自動化したイメージ。

バーチャル読者による多角的セルフレビューというのもやっていて、ソフトウェア業界のビジネスパーソン、エンジニアマネージャー、意地悪なエンジニア、日本語表現にめちゃくちゃ厳しい読者……など複数の仮想読者プロンプトに原稿を読ませて指摘を出させ、それを全部取り込んで修正していた。「防御力の高い技術ブログを書こう」で推奨されている多角的セルフレビュー手法の完全自動版といえる。

「AIで原稿量産しました」系の本はもう珍しくないけど(Web投稿サイトでは問題になっているが)、ここまでエンジニアリング的にシステム構築して作り切った例は商業で初ではないか。書籍を書くためにまずツールを書く、という発想も新鮮だと思った。

でもよく考えると雑誌にエンジニアが寄稿するときに仕事をしたエンジニアの秘伝スクリプトが出回っていたりする風習があり、それの延長線上かもしれない。今はバイブコーディングによってそれがリッチUI化したり無人化できたりして今は快適になっているのではないか。

そういえば Andrej Karpathy も、LLM と一緒に書くための読み書きループや専用ツールを自分でバイブコーディングしていると以前話していて、AIと協働する前提で“まず環境から作る”という動きは広がっている。一昔前はプロダクトを作ろうと思っていたらツールを作り始めていた、みたいな失敗談として語られていたものがAIの手数が早すぎてツールはすぐ完成して継続するところまで行ってしまうイメージだ。

@laiso
インターネットユーザー。lai.so