チョコ祭り

lammu
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このまえTwitterで、「バレンタインが自分のためにチョコ買いまくる祭りになって本当によかった」という趣旨のツイートを見て、「本当によかった」と思った。

ここまで来るために私たちは

  1. バレンタインデーの文化が日本に持ち込まれ、本家をもとに「女性が好きな人にチョコを渡す日」となる

  2. いつしかそれが「女性がどうでもいい人たちに対して社交辞令でチョコを配る日」になる

  3. みんなそれが嫌になる(もらう側も、理不尽にホワイトデーに所持金を吸われるマイナスイベントが発生する)

  4. それがSNSで可視化される。バレンタインデーは誰も幸せにしないということがわかる

  5. 企業側も売り方を工夫し、「自分用においしいチョコを買っちゃおう!」という宣伝の仕方にする。バレンタインデーは自分のために、きちんと納得した形でチョコを消費するお祭りとなる。

    1. 企業はとにかく消費をしてもらえさえすればよいので、別にギフト用である必要もなかった。

という道をたどってきたと思う。本当に長い道のりだった。

そして、とても文脈が濃い文化になったなぁと思う。いまイタリアとかフランスの人に「日本のバレンタインデーはチョコを食いまくる祭りだよ」と説明したら「なんで!?」と言われるんじゃないかなぁと思う。知らんけど。

バレンタインデーのいやな思い出

ちょっとだけ学校の事務のバイトをやっていたとき、まさに2のチョコ配りイベントがあった。私はこれがマジで嫌だった。

バレンタインデーが近くなると女性の先輩が声をかけてきて、「バレンタインデーに男性陣に配るチョコを買うので500円募金してほしい」と言われる。

このイベントの最悪なところは、主催者が部長であることだ。逆らいにくい。部長は決して悪い人ではなかったけれど、50代である彼女には「バレンタインには女性社員が男性社員にチョコを贈るのが常識」という意識があるみたいだった。

もちろんこの募金は強制ではない。だが、女性陣が少人数である中で、ひとり協力しないだけでチョコの購入資金に影響するらしい。「ほんとごめんね。協力してくれる?」とお願いされると、なんかもう大きな力に逆らいきれる気がしなくて打ちひしがれて、500円出してしまう。腑に落ちないまま。たぶん声をかけてきた先輩もそう。

なんの得もないのにお金を吸われるのも嫌だったけど、自分が「男性職員にチョコを贈りたがっているトラディショナルな女性職員のイメージ」の枠の中に入るようでそれがいちばん気持ち悪かった。自分の意思がねじ曲げられるのはとにかく気持ち悪いものだ。

それでも当日、よく世間話をする社員のおじさんに「ありがとう」と無邪気に喜ばれると、まぁいいか嬉しそうだし……と思う。そう、人は何も悪くないのだ。部長も先輩もおじさん社員たちも。しかしすぐ傍らに「癪だなぁ」という気持ちがある。

やはり、自分のブランディングやアイデンティティと合わない行動をさせられることと、まったく合理的でない慣習に付き合わされて不利益をこうむること、その二つがとにかくキモかったんだと思う。

あの職場はいまどうなっているんだろうか。時代に合わせて「もうやめようか」となったのだろうか。それとも、今年もみんなでお金を出し合ってチョコを買って配るのだろうか。

@lammu
友達に話すようなことを書く。