法律用語(2024.6.2)

lantana
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公開:2024/6/2

 法律を大学で学んだ。本当は言語学がやりたかったが、目指している職業で必要だった。

 でも、法律でも言葉で面白いところがある。ドイツなどから輸入した概念に対応するため、訳語を充てるのだが、それが日常で使う言葉となんとなくずれているのである。「翻訳が下手」と言う人もいて、私は外国語に詳しいわけではないので下手かどうかは判断できかねるのだが、そういうところは翻訳調の醍醐味ではないかと思う。まあ、法律の実業をしている人からすれば醍醐味なんかは知ったことではなく、わかりやすい方がいいかもしれませんね。

 具体的な例を挙げてみる。実際には翻訳は関係ないかもしれないが、とにかく業界用語で日常と違うものを。ここで書くことは面白さを紹介したいだけなので、実際に法的問題がある人、法律をこれから学びたい人はもっとちゃんとしたところを見てください。

 

・善意/悪意…これは比較的有名かもしれない。善意は知っていること、悪意は知らないことである。日常的にいう悪意のように言いたいときは「背信的悪意者」と言う。特に民法上、二重譲渡であることや登記がないこと、詐欺が関係していることなどを第三者が知っていたかどうかの問題があるときに使われる。

 

・果実…元の物から生じる収益。みかんとかも果実ではあるが、牛からとれた牛乳とかも果実であり、貸したお金から生じた利子も果実である。法定果実、天然果実という分類がある。

 

・当然に⇔直ちに~ない…他の選択肢があるときとないとき。「当然、○○である」とは言うが、「当然に○○である」というとなんとなく学術的な文章の雰囲気がある。他の分野でも言うのかは不明。

 

・欠缺(けんけつ)…欠けること。こんなのは民法の最初の方を学ぶときしか見たことがない。

 

・社員…株主のこと。これはもしかしたらビジネス用語とかでも使うだろうか。その会社で働いている人のことは従業員というそうだ。

 

・いわゆる事件名…公的な事件名ではないが、具体的・特徴的な言葉を用いており、一般人に、また即座に理解されやすい事件名。今本をぱらぱらと見たら「りんご事件」とあったが、何の事件のことか不明。「マクリーン事件」「マジックホン事件」「『宴のあと』事件」「北方ジャーナル事件」「宇奈月温泉事件」などは法律をやった人はよくわかると思う。

 

・現実の…物理的な。書面上でない。どうも「当然に」といい、助詞の使い方に特徴があるようだ。「現実の引渡し」でしか使わないかもしれない用語。

 

・未成年者…法律により異なる概念。19歳以下、17歳以下、15歳以下、14歳以下、未成年者に見える者など(と昔書いたメモにあったが、本当だろうか。もう覚えていない)。

 

・看做す(みなす)(擬制)…真実に関わらずそのように考える。反証により覆らない。失踪宣告などはこれ。なので7年以上行方不明の人がある日ひょっこり帰ってきたら大変である。特に婚姻関係などで看做しが効いてくる記憶。

 

・推定…看做すの対義語。一応はそのように考えるが、反証があれば覆る。

 

・事実…主観的に正しいこと。数学でいう命題に近いと思っているがどうだろうか。要は真偽を判定できる文章のようなイメージ。名誉棄損罪は「公然と事実を摘示し…」とある。なので本当かどうかは論点ではない。一方、侮辱罪は具体的事実を摘示しないで人の名誉を傷つけることという点で、名誉棄損罪と異なる。

 

・対抗する…有効に権利を主張すること。裁判で勝てるかどうかはまた別の問題。

 

・AないしC…A~Cの意味。なのでBも含む。

 

・~すべき…一般的に使われる義務を示すものと微妙に違う。強制の感が薄れ、「当然~である」のような自明の事実を示す意味で使われることがある。

 

 学生のときのメモがあったのでそれを元にしたが、どうだろう……。どんな分野でも専門用語や業界用語はあると思うが、それぞれの特徴をまとめたりするのも面白いかもしれない。

 前に書いた「言葉の拡張」とも繋がる話だと思っている。

@lantana
ランタナ/木苺/出フェイ 日記みたいに日々のことを書きたい