父がうちに来てくれて、一緒にお酒を飲んだ。楽しくなってしまい飲みすぎた。何を話したかあんまり覚えていないし翌日何もできないくらいの二日酔いに苛まれたけれど、ともかく一緒にお酒を飲めて嬉しかった。
俺が幾つの時だか、いつか一緒に飲みたいね、お酒を飲める時お父さんお母さんは何歳だね、みたいなことを話していた記憶がある。(それはある一点の記憶というよりは、食事の場で両親が酒を飲んでいて、未成人の誰かが飲酒に興味を示した場合に恒例の発話であった。そんなことを言っていた当時は、成人がとてつもなく遠い場所にあるように思われた。)俺はすでに22だから両親と一緒に酒を飲んだことは何度もあるけれど、サシで、さらに旅情など抜きで酒を飲み交わすのは今回が初めてだった。
その日を思い出すとなんだか泣けてくる。今でこそ酒好きの父だが、昔は酒に弱かったらしい。仕事で熊本にいた時の付き合いで飲んでいたら飲めるようになったのだと言っていた。知らなかったなあ。美味しい焼酎を教えてもらった。
俺の振る舞いにも父の姿にも、全てにバックグラウンドがあるんだと思った。話すことがこんなにある。我々はそれだけの長い時間を一緒に過ごしていたんだなと、二つの人生がそれだけの時間並走していたのだと思うと一人になった今でも泣けてきてしょうがない。まただ。いつから俺はこう一丁前にセンチな人間になったんだと思う。手放しがたいものに気づくたびに苦しくなる。酒に酔って涙腺が緩むのは母親譲りだと指摘された気がする。ああ、あんなに飲むんじゃなかった。もっと思い出すべきことが、記憶に刻むべきふたりの時間があったかもしれないのに。テレビ台に置かれたDAIYAMEの瓶は片付けないでおくことにした。
(2025-08-24)