ゲキシネ『バサラオ』感想カイリについて。
ネタバレと私の妄想話あります。地雷の方、ご注意ください。
狂い桜でバサラの宴を催すヒュウガと再会したカイリ。
幕府の役人たちに捕らえられそうになる散華の女子を見て、”女は守らねば”と正義感が働き素早く駆け寄り役人たちの間へ斬りこもうとするが、逆に短刀を構え戦う女子に取り囲まれてしまう。身のこなしが軽やかで足が速く刀の使い方もスマートなカイリなのに、なぜあっという間に散華の女子に取り囲まれてしまったのか。それでも女子を守ろうとして加勢しようと飛び込みかけたところを冷めた視線で見ていたヒュウガに彼女たちの花道だ、野暮はやめろと後退させられてしまう。
早い展開の中で、女は男が守るものなど当然とされてきた固定観念が身に付き過ぎた男と、これまでの習慣と考えを打ち破って自分の好きに生きると覚悟を決めた人間たちの対比が見えて、バサラオの、ヒュウガの思想感がわかり面白かった。間者として百戦錬磨で頭の回転が早いカイリだから、それまでの”常識”が当然とされている世界だったらきっと女子たちを役人から守りヒーローとして大絶賛されたはずなのに、ヒュウガ率いるバサラオワールドだから全く通用しなかった。
でも、カイリの言動は何も間違ってない。
カイリの目には、美しい男に惑わされて自己犠牲を強いられている女子たちと見えていたのかも。守ろうとした女子たちに逆に邪魔をするなとはじき出されて、戦う女子たちを”何を言ってるの?”みたいにきょろきょろきょとんとした目で見つめて戸惑う様子から、カイリの固定観念にヒビが入り、散華の女子の強い覚悟は”彼女たちにとっては正しい行動”として伝わってきた。
役人の間をくるくる回転しながら華麗にすり抜けて逆袈裟斬り?下から斜めに斬りあげた姿はカッコよかった。
カイリは何も間違ったことはしていない。
ただ、混乱の世の中で生まれたこれまでにない思想を持つ、公家や大名など強い後ろ盾を持たない新しい集団の中では、カイリの”正しさ”は”正しくない”と既に意味が変わってしまっていた。
新しい思想を目の当たりにしても、あまりのカオスな状況に、カイリは自分が思う”正しさ”を貫き通そうと戦いに敗れて命を落としたマリに駆け寄り、真っ赤に目を充血させてヒュウガに怒りをぶつけた。いくら状況把握と頭の回転が早いカイリでも、身についている道徳倫理宗教感と同郷のマリに対する深い気持ちが勝って怒るのは当然。
バサラと口にするヒュウガにしてみれば、地域に根付く宗教も誰かが人をコントロールして同調圧力で縛る集団だから邪魔な存在であり、ヒュウガが決めた狂い桜を中心とする美の輪廻こそバサラの世の宗教、カイリが感じた悔しさと怒りは冥途へ向かうマリにとっても”そうじゃない”と言いたかったのでは…。
幕府キタタカや朝廷ゴノミカドの権力争いが激しく、汚れ仕事はカイリたち間者に少ない褒美でやらせ、民衆の不満苦しさに耳を傾けず、混乱と腐敗が進む国に嫌気がさしていたカイリも自分のやりたいこと(ヒュウガ殺害)のために幕府を抜け出した決断は相当覚悟が必要だったのでは。
カイリの大きな決断を遥かに超える考えで、自分の顔の美しさを絶対的なもの、光だとして誰にも邪魔されない強さと残虐さを携えて生きるヒュウガから、(焼いた)村も国も一緒だと聞けば、こいつは生かしておけない殺そうとより強く思うよね(思わない?)
「そうか、村も国も"一緒"か!」
と、それまで軽快な声音で郷土の昔話から執権潰しに話が広がった瞬間のオウム返しな回答だけ、特に”一緒”の部分、本音を話す時の低く憎悪をにじませた声音に一瞬変わったのを、劇場でもうわっ!と思ったけど、ゲキ×シネでははっきり違いが聞こえてゾクッと鳥肌が立った。次の言葉で、また軽快な声音と口調に一瞬で変わり、切り替えが早いから気をつけて聞いてないと聞き逃しそう。ここ、拍子木か鈴の音入ってたかな…。ドルビーシネマで見て確認したい笑
ヒュウガを殺した後、カイリ自身どう生きていきたいかまで、この時点で考えていたのかな。なんとなく、この時点ではまだそこまで考えていなかったように思う。ヒュウガだけを殺すつもりが、サキドやクスマに出会い、幕府や朝廷を巻き込む事態に進んでいくにつれて、新時代を築く者としてかテロリストとしてか、間者とは違う立場の覚悟は自然と身についていったのかも。ヒュウガの軍師になり、煩悩寺へ向かう瞬間、うつむき加減で微笑んでいるように見えたのは、幕府の犬だった生き方からまさかの人生の転換にカイリの優越感が刺激されたのか。六波羅攻めの直前に、ヒュウガがバサラの王となると聞いた瞬間、ラストの内裏で起こった惨劇を決めたように思うが、ヒュウガを消してカイリ自身も最期にしようといつ決めた?(ヒュウガに阻止されてしまったけど)
カイリはそれまで培ってきた信念で、時の権力者が誰になろうとヒュウガを殺すことこそ自分が生きる意味と信じて勇敢に行動した。その言動がどれだけ人を欺き命を奪うことであっても、目的達成の為、カイリにとっての”正義”として、全力で駆け抜けた。