シャウエッセン巻き

お京
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節分前夜、と言うより節分の早朝と言ったほうがいいだろうか。さあ寝ようという時になって閃輝暗点(せんきあんてん)が出た。息をするのも困難になる激しい頭痛の前兆である。

閃輝暗点はクンショウモのような形状をしていて、視界のなかでビカビカと光りながらしばらくの間ウロつき、これが消えた時に激しい頭痛が来る。出てくるのは季節の変わり目が多い。

大急ぎで頭痛の薬(高価なのよこれが)を服用してベッドに飛び込んだ。なにせあと数時間で節分である。今年の節分は恵方巻にシャウエッセンの海苔巻きを作ろうと楽しみにしていたのだ。激しい頭痛なんか起きてしまったら、もうその日とその次の日は何も出来なくなる。楽しみにしていたシャウエッセンの海苔巻きは当然後日引き延ばしとなるだろう。なんとかして前兆のうちに散らしてしまいたい。頭痛の薬のほか、エチゾラム(抗不安剤・睡眠導入剤)も投入する。寝るのだ。寝てしまうのだ。

午前2時に寝て、午前5時に起きる。3時間である。起きた時には当然のように「何か」が残っていた。残滓みたいなものが。なんとか「散らした」感はあった。けれどシャウエッセン巻きを作れるほどかと問われると、うつむくしかない雰囲気であった。

致し方なく、今年の恵方巻は市販のものにした。市販のものはおいしい。だけど私はシャウエッセン巻きが食べたかったのだ。レタスを敷いて、シャウエッセンと何がしかシャウエッセンを引き立てるようなものを巻いて食べたかった。もちろん、海苔巻界においてはシャウエッセン巻きなど邪道中の邪道だろう。しかし家庭内の食事においては「邪道」と言われるようなことが堂々と許されるのである。

ああ!シャウエッセン巻き!食べたかった!諦めることはすまい。近日中に強行するつもりだ。

待ってろよ!シャウエッセン巻き!