雪だるまへの期待もむなしく、朝。車のフロントガラスをうっすら白く覆う程度で、それでも跳ねるように子どもたちははしゃいでいる。気まぐれにひとひら落ちてきた雪を溶かしてしまいそうなほどに。
南国に雪を降らすほどの寒さに冬の底を感じる。これ以上に寒くなることはもうほとんどないはずだと思い、いったい希望なんだか我慢比べなんだか。ふいに外に出たところ思わず顔をしかめてしまうほどの冷気に全身の筋肉がこわばる。
かつての恋人が「寒いときほど肩の力を抜いた方が暖かい」と教えてくれたことを冬がくるたび思い出す。しかしできた試しはなくて、今日だってそうだ。