少し前にシャツを買った。襟のない、オックス生地のシャツ。春らしい淡いグリーンに一目惚れし、手に取った。
なのに、だ。家に帰り、着てみると、なんだか少し似合わない。まったく似合わないわけではなく、絶妙なしっくりこなさ。狭くはない肩幅を強調しているように見え、どこか野暮ったい。
新しい服を買った高揚感がしゅるしゅるとしぼむ音が聞こえ、ハンガーラックの端にそっとシャツをかけた。
前々から、なんとなくシャツが得意ではないなといううっすらとした自覚があり、ここにきて決定打を放たれた形である。
……しかし、どこか諦めきれない気持ちがあった。まったく似合わないならまだしも、微妙な似合わなさ。誰かに聞けば「別に似合わなくはないんじゃない?」と言われるであろう似合わなさ。
それなら着方を変えればなんとかなるんじゃないか。そう思って、もう一度シャツを手に取った。羽織ってみたり、真ん中のボタンだけ留めてみたりと試行錯誤する。うーん、どれもなんか違う。
上のボタン2つだけを空けてみた。……おや? 良い感じでは?
たったこれだけのことなのに、思わずニヤニヤしてしまうほどうれしく、着るものというのはこんなにも自らへダイレクトに作用するものなのだなと改めて感じ入る。買い物に行った先のスーパーで、ガラスに映った自分を二度見してしまった。
40代に入り、かつてと似合う服が本当に変わってきたことの切実さは増す一方であるから、うまく着ることができたときはこんなにもうれしい。