黒い小猫が小路を横切った。太陽は頭上をとうに越えていた昼過ぎのことだったと記憶している。そう、晴れた日だ。けれども年ばかり取った陰気なビルとビルのあいだはジメジメと薄暗く、汚い。どうやって出来たのかあまり考えたくもない水たまりがポツリとある。それに突っ伏している影も。どうして目を向けてしまったのだろう。厭な臭いが鼻についたから、ぽちゃんという音が聞こえたから、違う、あの猫を追いかけたからだ。
黒い小猫が小路を横切った。太陽は頭上をとうに越えていた昼過ぎのことだったと記憶している。そう、晴れた日だ。けれども年ばかり取った陰気なビルとビルのあいだはジメジメと薄暗く、汚い。どうやって出来たのかあまり考えたくもない水たまりがポツリとある。それに突っ伏している影も。どうして目を向けてしまったのだろう。厭な臭いが鼻についたから、ぽちゃんという音が聞こえたから、違う、あの猫を追いかけたからだ。