やっとこの境地にこれた。フランス語が苦行じゃなくて、楽しい、の感覚に。
パリ市の市民講座でフランス語を受講して、もう5期目に入る。妊娠中も出産してからも通い続け、期末試験もプレゼンテーションの課題もなんとかこなしていた。毎回申し込んでは「お金も払ったし自分のためにも行かないと...」と重い腰をあげて、毎週定期的に足を運んでいた。今回も、「ここまできたし、行きたくないけど行かないと。レベル高そうで不安だな」と心の中でつぶやきながら近所の校舎まで足を運んだ。
21時半。授業が終わった。...楽しかった。不安な気持ちを抱えて教室に入ったのが嘘のよう。授業というよりも、大人のコミュニティサークル。村上隆似でファンキーなベトナム系の先生が最高の場を作り上げてくれた。
はじめての授業らしく、当日クラスに集まった24名の紹介から。集団お見合いのように、二列になって前にいる人と一対一で5分間会話する。会話が終わったらまた隣に移動して別の人との会話を3~4回繰り返し、最後は全員で輪になって、ひとりひとり他己紹介する。
多様性の象徴のようなクラスだった。イタリア、イラン、アフガニスタン、トルコ、イギリス、アメリカ、オーストラリア、ロシア、エストニア、アルバニア、ポルトガル、ブラジル、オランダ、日本。アジア人はわたしひとり。イタリア出身がいちばん多くて4人だけど、出身地もローマ、シチリア、サルディーニャ、ヴェローナとさまざま。仕事も哲学者、俳優、看護師、英語の先生、裁判官、博士課程の大学院生、データアナリスト、エンジニア、アニメーター、カスタマーサポート、会社受付、パティシェリ、図書館員と、会社員から専門職まで幅広い。フランスに来た理由も、本人や家族の仕事のためはもちろん、戦争など自国の情勢が難しくて国を出た人たちもいた。
国籍も年齢も職業もフランスに来た理由もみんな違うけど、この場を共有できる喜び。会社に入っても、どのコミュニティに入っても、こんなに多様性が担保されている環境はなかなかない。だからこそ、いろんな経験を積んできたクラスメイトから学ぶことも多いだろうし、人間観察やコミュニケーションが取れること自体が、人生の奥深さを知り、人としての豊かさを育むことができる。フランス語の上達よりも、はるかにわくわくしている。
「結婚とか海外移住で、他の人より数倍いい経験できるから、成長率は心配しなくていいとおもうよ。」——移住前に親友Mがくれた言葉をいまさら深くかみしめている。
「楽しいを上位概念におく」。Yちゃんとお互い決めたことが、これまで意識でネックになっていたフランス語にまで広がって、楽しめる状態になったことがとにかく嬉しい。
楽しめば、きっと上手くなる。ここまで続けてくれたことに自信を持って、毎週のフランス語の授業、毎日のフランス語の勉強・会話を楽しむぞ。