先週おもしろかったコンテンツ(3/2w)

Lisa
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先週に読んだもの・見たもの・聞いたものからおもしろかったコンテンツをめも兼ねて紹介。

1. Arte Documentary: Des enfants ? Non merci ! | La vie en face (元タイトル:My so-called selfish life)

タイトル(意訳:子ども?お断り)とキャプチャー画像に惹かれて視聴。1時間15分と長尺のドキュメンタリーだったが、一気に見てしまった。最高に面白かったし心揺さぶられた。

私自身はいま子どもを育てていて、子どもが幸せの源泉だという考えを持っているが、周りに子どもを持たない選択をした友達がちらほらいるので、自分とは全く違う考えの人たちがどのようなことを考えているのか?を知りたくて見た。

内容は「子どもを持たないこと」について。自らも子どもを持たない選択をした女性監督が、社会学者、医者、"子なしを選択した"女性たち—70代の先駆者から20代の若者、LGBTQカップルなどにインタビューしたことを、自身の想いとともに語られている。

監督のTherese Shechterさんは、社会的に求められる"女性らしさ"への反逆のテーマに沿ったドキュメンタリーを作っている方。ロバート・デニーロの映画制作会社で20年間働いた後に、自身が代表の映像制作会社を独立。アメリカ発の本作が、海を超えてヨーロッパ・中東・アジアと流通していること(Arteもこの作品を買い取ったと推定する)からも、この"子どもを持つことは当たり前"の前提をくつがえす問いが、いかに普遍的かを示している。

コンテンツのつくりかたとしても秀逸だった。リアルな人間のコメントだけでなく、社会的偏見を含む昔の時代のドラマシーンや説明のアニメーションが途中に挿入されていて、笑いながら見ることができた。

価値観は時代とともに変化する。同性婚がこれだけ広まってきているのだから、もう"(結婚していても)子どもを持たないこと"、"そもそも結婚しないこと"が、社会的圧力ではなくて個人の選択に委ねられるといいなと思っている。ドキュメンタリーの仕様ではあるが、女性たちが自分の考えを堂々と述べてその考えのもとにそれぞれの人生を選択していることは、さすがアメリカというか出演者の強さを感じた。監督とお母様との対話シーンは泣いた。それぞれの家族がいろんな事情を持っている。

きっとこの作品は、子どもを持ちたくないけどなかなか周りには言えない/自信を持てない、と思っているひとたちに大きな希望を与えるだろうな、と思った。子どもを持っている私も、ここまで心を打たれたのだから。時間をおいてもう1度みたいな。

2. 稲葉俊郎 "いのちを呼びさますもの ―ひとのこころとからだ―"

きっかけはアーティストの友人。芸術と医療の掛け合わせには可能性があるのでは、との思いを共有しており、今後の活動で何かヒントになることはないかと思い読んだ。製本が美しいので、紙で読みたかったが、今すぐ読みたかったのでKindleで読了。著者は医師でありながら、芸術活動にも従事。本は体と心の構造、心のはたらき、医療と芸術の3章立てで展開される。序章の「すぐれた芸術は医療である」のタイトルにまず惹かれて読み進めた。

人生全般に関すること、芸術に関することの両方で学びがあった。

前者で印象に残ったのは「健康とは主観的に実感をともなって体感される、心身の状態」をさすとの指摘。病気は客観的に定義できるけど、健康はあくまで主観的なもので人それぞれによって違う。まずは自分の体や心の声に耳を傾けることの大切さも学んだ。

東洋では心の構造をとらえるときも、西洋のように言語で定義して整理することを最終目的にするのではなく、身体の技法とセットになって組み立てられているという(例:禅の掃除や食事)。心の状態は体の状態によっていとも簡単に変わってしまうからこそ、身体の感覚を大切にしているそう。

"辛抱強く、時間をかけて、しかるべき時がやってくるのを待つことが必要な時もある。未来の自分に可能性をかけ、未解決のまま託す。葛藤は葛藤のまま、矛盾を矛盾のまま抱え続ける力"、はまさにネガティブ・ケイパビリティだなと、既知の概念への理解をさらに深めることもできた。自分の視点を改善して、気づくことで葛藤は苦でなくなる。

芸術に関しては、「心のエネルギーの供給源になるのが、文化や芸術」。特に本で引用されていたミヒャエル・エンデのこの言葉はとても心に残った。私の個人ミッション「アートで心が豊かな社会をつくる」にも共通するような気がして。

本物の芸術では、人は教訓など受けないものです。前よりりこうになったわけではない、よりゆたかになったのです。心がゆたかに—わたしの中の何かが健康になったのだ、秩序をもたらされたのだ。現代文学で見落とされたのは、芸術が何よりも治癒の課題を負っている点です。

そして「誰もが日常の中で新たな視点を獲得して、人生という芸術作品を創造している」「創造とは、本来的には生きることと不可分なのだ」とおっしゃってくださったことは、生きる希望になった。職業としての芸術家じゃなくても、日々つくり続けることはできるんだ、と。

著者のあとがきの最後に、「河合隼雄、三木成夫、井筒俊彦のすべての著作から大きな影響を受けて、本書を記している」と書かれていた。この本自体は稲葉さんの思索からなる創作物であるが、その裏にはこの知の巨人たちの思索を穴が開くほど精読した経験と、心臓外科医として日々患者に向き合っている経験、芸術監督として現場に足を運んだ中での経験を組み合わせてオリジナルなものになっているのだと感じた。宮崎駿さんが児童文学に多大な影響を受けてジブリ作品をつくったように、何かしらの作品からのエネルギーを受けて創作活動は連鎖していく、その美しさを見せてもらったような気がした。

3. ドラマ:不適切にもほどがある!

Netflixで視聴(この週はep.1のみ)。次週分のコンテンツサマリーで詳しく語る。

週半ばに入って、記憶が薄れてきている... 理想的には月曜更新にしたいのだけど、なかなか難しい。。

@lisa
パリで家族3人で暮らしています。「アートで心が豊かな社会をつくる」ために、いろいろやっています。フランスでの日常、子育てのこと、アートのことなど。www.theartscene.com