3月某日。春のおとずれを告げるかのように、空が真っ青な金曜日。これまでのグレーで暗い空がなかったかのように、パリジャンたちも太陽をめいっぱい浴びるのを心から楽しんでいる。サングラスをかけ、Tシャツで公園のベンチに座って、太陽を浴びながら子どもの様子を見守ったり、友人と何気ない会話をしたり、読書に耽っていたり。
夕方、むすこを連れて友人Tと久々のキャッチアップ。サン・ミッシェルのテラスで、ガリアのクラフトビールと自家製マヨネーズ付きのポテトを頼む。日本・フランス・アメリカで事業を展開しており、いまはLAを拠点に活動している。4月に新製品の発売が始まるので、忙しくなる前に東京とパリに出張できたとのこと。別の国に住んでいるのに数ヶ月に1回は会っているから、あまり久しぶり感はない。忙しいのにいつも時間を作ってくれて、背中を押してくれる、大切な友人。
事業の近況を聞き、スタートアップのせかいのことを思い出して胃が痛くなる。スピード感と、良いことも悪いことも波があること。「CEOは生まれながらにしてCEOなわけではなく、失敗から学んでいくからね」。かつていた会社や関わっていた起業家のことを思い出して、今度は胸が痛くなった。あのとき、あのひともこんなつらい思いをしていたのかな。いろんな痛みを乗り越えて、事業をつくって成長させていくのだろうけど、その痛みのレベルが普通に社会人として生きているのと比べて数も深さも違いすぎる。全部自分の責任、と受け止めなきゃいけないし。何も感じなくなるのでは、と心配になるけれど、それでも前を向いて、希望を持って行動していく姿は勇ましい。
「人に対する態度も、因果応報だからね。きっと返ってくるよ」彼に紹介してもらった人とうまくご縁がつながらなかったことを報告したときも、励ましてくれた。つねにギブの姿勢を忘れずに向き合ってくれるのは、これまでいろんな人への恩を大切にしてきたからいまの事業や自分があるって本人が自覚しているからなんだろうなな。
私たち夫婦が彼にできることは、いつでも戻ってこれる安全な居場所をつくること。美味しいごはんとお酒を一緒に嗜み、生きることを楽しむこと。いいこともつらいことも話せるような場をつくること。利害関係がない、友人だからこそできることだと思っている。
日が暮れ始めた頃、むすこが眠そうなので帰宅。仕事を終えて合流した夫とバトンタッチ。友人MとPも交わり、4人は二軒目のバーに消えていった。一緒に話せたのはほんの1時間半だけど、心のエネルギーが充電された時間だった。
カリフォルニアから青空を持ってきてくれて、ありがとう。